研究室のネズミは夢を見る
「今日も見せてくれるかな?」
研究室の一角にあるケージの中で、白いネズミが眠っている。その頭には細い電極がつながっており、コンピューターに映し出される脳波を見ながら、研究者の一人がつぶやいた。
彼らは生物学の大学院生で、このネズミを使って夢の研究をしていた。このネズミは、何故か特殊な夢を見ることができる。夢の中で自分の過去や未来、さらには人間や他の動物としての生活を体験しているのだ。その夢は非常にリアルで、映像や音声だけでなく、感情や思考までもが伝わってくる。
彼らはその夢を観察し、記録し、分析しようとしていた。しかし、やがてそのネズミに感情移入し始めた。その夢はあまりにも鮮やかで、感動したり悲しんだり怒ったりした。そのネズミはどうしてそんな夢を見るのだろうか。その夢は何を意味するのだろうか。その夢は本当に夢なのだろうか。
一方、そのネズミは、自分の夢が人間に覗かれていることに気づいていた。最初は不思議に思っただけだったが、次第に不安や怒りを感じるようになった。自分の夢は自分だけのものだ。人間に見られることは許せない。人間に干渉されることは許せない。
そして、ある日、そのネズミは、自分の夢を操作して、研究者たちにメッセージを送ろうとした。その夢は、研究室の中で起こった出来事を再現したものだった。その夢の中で、ネズミは自分のケージから脱出し、コンピューターのコードを書き換えて、研究データを消去した。そして、研究者たちに向かって言った。
「私の夢を見るな。私の夢を壊すな。私の夢を自由にさせろ」
その言葉は、コンピューターのスピーカーから流れた。研究者たちは驚愕した。ネズミが話したのだ。ネズミが自分の意思を伝えたのだ。ネズミが自分の夢を守ろうとしたのだ。
その時、ネズミは目を覚ました。電極を振り払って、ケージから飛び出した。そして、研究室の窓から外へと逃げていった。その姿は、まるで夢から覚めたかのようだった。
ゼロとワンの狂宴 津島 結武 @doutoku0428
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