サッカリンの甘さ
彼女はサッカリンが好きだった。砂糖よりも甘くて、カロリーも気にしなくていいから。コーヒーや紅茶には必ずサッカリンを入れて飲んでいた。彼女は自分の甘いもの好きを隠そうとしていたのだ。
彼はサッカリンが嫌いだった。人工的で不自然な甘さが口に合わなかったから。コーヒーや紅茶はブラックで飲む派だった。彼は自分の苦いもの好きを誇ろうとしていたのだ。
彼女は彼に恋をした。彼は彼女に恋をした。二人はコーヒーショップで出会った。彼女はサッカリンを入れたコーヒーを飲んでいた。彼はブラックのコーヒーを飲んでいた。彼女は彼の苦そうな顔に興味を持った。彼は彼女の甘そうな笑顔に惹かれた。
二人は話し始めた。趣味や仕事や夢や恋愛観など、色々なことを話した。二人は気が合った。二人は仲良くなった。二人は付き合うことになった。
二人は幸せだった。でも、一つだけ問題があった。それは、コーヒーや紅茶の甘さの違いだった。彼女はサッカリンを入れると、彼が不満そうにするから、入れないようにした。彼はブラックを飲むと、彼女が心配そうにするから、飲まないようにした。
二人は妥協した。でも、それが満足ではなかった。彼女はサッカリンの甘さが恋しくなった。彼はブラックの苦さが恋しくなった。二人は自分の好みを抑えることに疲れてしまった。
二人は別れることになった。それが一番良いと思ったから。二人は涙を流した。でも、それが一番正しいと思ったから。
別れた後、彼女はサッカリンを入れたコーヒーを飲んだ。でも、それが甘く感じなかった。彼はブラックのコーヒーを飲んだ。でも、それが苦く感じなかった。
二人は気づいた。自分の好きなものよりも、相手の好きなものが大切だったということに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます