コンプラニン

 海辺の小さな町に住む少年・タクマは、夏休みになるとよく海で遊んでいた。彼は海の生き物が大好きで、潜水メガネとシュノーケルを持って、色とりどりの魚や貝やサンゴを見るのが楽しみだった。


 ある日、タクマはいつものように海に入っていた。水面近くにはカラフルなウミケムシがたくさんいて、タクマはそれらを眺めていた。ウミケムシはふわふわとした体毛が特徴的で、タクマはその触感が気になっていた。でも、友達から聞いた話では、ウミケムシには毒があって触ると危険だということだった。


 タクマはそんなことを思い出しながら、ウミケムシを近くで見ていた。すると、ひときわ目立つ赤いウミケムシが目に入った。タクマはそのウミケムシに興味を持ち、もっとよく見ようと近づいた。その時、波が来てタクマの体を揺らした。タクマはバランスを崩してしまい、思わず赤いウミケムシに手を伸ばした。


「あっ!」


 タクマはすぐに手を引っ込めたが、もう遅かった。手の甲に赤いウミケムシの体毛が刺さっていた。タクマは慌てて体毛を抜こうとしたが、それが逆効果だった。体毛からコンプラニンという毒が手の甲に流れ込んできたのだ。


「痛っ!」


 タクマは激しい痛みに耐えられず、海から上がった。手の甲は赤く腫れており、かゆみも感じた。タクマは泣きそうな顔で家に帰った。


「お母さん! 助けて!」


 タクマは家に着くなり母親に助けを求めた。母親はタクマの手の甲を見て驚いた。


「タクマ! どうしたの? ウミケムシに刺されたの?」


 母親はタクマを抱きしめて、消毒液と冷たいタオルを持ってきた。タクマは母親に事情を話した。母親はタクマをなだめながら、手の甲を消毒してタオルで冷やした。


「大丈夫だよ。ウミケムシの毒はしばらくすると治まるから。でも、もうウミケムシには触らないでね。危ないから」


 母親はタクマに優しく言った。タクマは母親に感謝して、うなずいた。


「ごめんなさい。もう触らないよ」


 タクマはウミケムシに触ったことを後悔した。ウミケムシはきれいだけど、やっぱり危険な生き物なんだと思った。


 その日から、タクマは海に入ってもウミケムシには近寄らなかった。ウミケムシは遠くから見るだけにした。タクマは他の海の生き物に興味を持ち始めた。カニやエビやイカやタコなど、ウミケムシとは違う魅力がある生き物だった。


 タクマは海の生き物が大好きで、潜水メガネとシュノーケルを持って、色とりどりの魚や貝やサンゴを見るのが楽しみだった。



※ウミケムシに刺された場合、ガムテープやセロハンテープ等で毒針をそっと取り除き、流水で洗い流すことが対処法として推奨されています。針が何本も刺さっていることが多いので、除去できていない針を見つけたら、再度流水での除去を繰り返してください。

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