ふたつの本屋さん

八咫空 朱穏

ふたつの本屋さん

 メルは今、ご主人さまのお買い物についてきていて、本屋さんにいる。ご主人さまは、新しい『まどーしょ』というのが欲しいみたい。


 本屋さんは、ご主人さまのお部屋よりとっても広くて、いっぱい本棚ほんだなが置いてある。


「メルも本、買っていーい?」

「1冊だけなら、好きなものを買っていいわよ。私は、魔導書のところに居るから」

「はーい!」

 

 自分でも読めそうな本が置いてあるところを探す。本棚の間をあちこち歩いて、読めそうな本がいっぱいあるところを見つける。


 本棚に入っている本はおうちにないものばかりで、どれも面白そう。


 この本がいいなー! ……こっちもおもしろそー!


 面白そうな本がたくさんあって、なかなか選べない。1冊って言われなかったら全部買いたい。でも、ご主人さまに1冊だけって言われているから、選ばないといけない。




「メリッサ、買う本は決まった?」

「ご主人しゃま……? 買う本は決まったのれすですか?」

「ここにはなかったわ」


 ご主人さまの用事が終わったのなら、メルがご主人さまを待たせてはいけない。すぐに買う本を決めなきゃ。


「メル、これがほしい!」


 おもしろそうな本の中から1冊を手に取ってご主人さまに渡す。ご主人さまは、メルが選んだ本だけを買って店を出た。


 お買い物が終わったから帰るのかな? と思っていると、ご主人さまはおうちと反対の方に歩き始める。


「ご主人しゃま、そっちはおうちじゃないれすよ?」


 ご主人さまから離れないようについて行きながら、どこに行こうとしているのかを聞く。


「寄りたい場所ができたのよ。そこの方が、私の求めている魔導書がありそうだから」

「ちがう本屋しゃんに行くのれすか?」

「本屋には行かないわ。古本屋に行くのよ」

ふりゅ本屋ー?」

「ここみたいに新しい本がない本屋さんって感じのところよ」


 本がいっぱい置いてあるなら、またおねだりしてもいいのかな?


「ご主人しゃま。しょこそこでまた、本を買ってもらってもいいれすか?」

「メリッサの欲しいものがあれば、だけれどね。古本屋は、あんまりメリッサが好きそうなのは置いていないのよ」

「そーなのれすか?」

「ええ。どっちかっていうと、私が欲しい本の方が置いてあるわ」


 買ってもらった本をかかえて、両手が空いているご主人さまと並んで歩く。


 ご主人さまの探している本が、見つかるといいなー!

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ふたつの本屋さん 八咫空 朱穏 @Sunon_Yatazora

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