翡翠のなみだ 🟢

上月くるを

翡翠のなみだ 🟢





 ええっとですね~、知人がコロナ明け記念に(笑)出雲へ旅しておりましてね~、そこからポストカード、ええ、いまどき珍しい絵葉書を送ってくれはったんですわ。


 出雲といえば出雲大社、ご祭神は head of 神さまの大国主大神おおくにぬしのみことはんでっしゃろ。

 で、大国主大神はんといえば思い出すのが翡翠にまつわるケシカラン伝説でして。


 なにぶんにも古いことですし、他国の人はほとんど知らんことやと思いますけど、わたしら他生の縁がある者は、ちょっとばかり、胸がざわつくものがありまんねん。




      🦅




 古事記よりむかし、越の国(現在の北陸地方一帯)は奴奈川姫ぬながわひめに支配されていた。

 この国では翡翠が特産だったが、それに目をつけたのが出雲の大国主大神だった。


 ヤンチャな大国主大神は奴奈川姫を妻にしようと越の国へ出向き、歌で求婚した。

 出雲に移った奴奈川姫は、のちに諏訪大社の祭神になる建御名方たけみなかたを出産した。


 だが、このころになって大国主大神は強欲な本性をあらわし、高価な翡翠の産地や加工技術などを妻から聞き出そうとしたので、奴奈川姫はひそかに出雲を脱出した。


 怒った大国主大神が差し向けた追っ手の軍勢に追い詰められた奴奈川姫は、あわれにも故郷の姫川に身を投げて果てた(姫が淵)。のちに、翡翠を守った姫を慕う所領の民たちによって、糸魚川・天津あまつ神社のご祭神として祀られた。




      🦩




 姫川の川底で美しいさみどり色にきらめく翡翠は、奴奈川姫のなみだである。💧

 というのは判官びいきの付け足しなんやけど(笑)大国主大神って、なんやねん。


 そのあとも国盗り神話で、神代版P大統領並みの強欲ぶりを発揮しはってはるし、どこが head of 神さまやねんって感じやけど、言い訳が巧かったからしゃあないな。


 でな、三年もお預けを喰らった国内旅行の再開に、わざわざその訳あり大国主大神を拝みに行った知人の見識をたしかめたいと、いまから手ぐすね引いてまんねんで。




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