届かぬ恋を抱く青年

武命たける!生物のノート見せてー」

「寝てたもんな」

 この男は文也海斗ふみやかいと。自由奔放で好奇心旺盛。俺と同じ高校2年生だ。勉教よりも運動が好きな、ザ・運動会系陽キャって感じだ。俺とは対極的な存在だが、俺が一緒に放課後一緒に帰っているのが正直違和感でしかないはずだ。

「今日どっか寄ってくか?」

「いいじゃんいいじゃん!うどん食べようぜ!」

「わかった。ノートの代わりに奢りな」

「せめて半分で勘弁」

「オケ」


「武命、きつねさんくんね?」

「いいよ」

 海斗は俺の丼から大きいきつね揚げを箸で取っていった。口つけた箸だよな…。

 俺は海斗のことが好きだ。恋愛感情を持っている。なんせ俺はゲイなんだ。男が好きになる。普通ではない人種なんだ。

 欲を言えば俺は海斗付き合いたい。だけど、海斗の好みは女の子だし、巨乳好きだ。叶うことのない夢なんだ。俺が見ているのは…。

「あ!武命!」

「なんだ?」

「今度さ、鳥谷高校の女子との合コンがセッティングされたんだよ。武命もこね?」

「合コンて…」

 正直言って心配はしていない。海斗はあまりモテる方ではない。でも、だからといって合コンに行って海斗が好きな女子を見つけてメロメロびなっているのを見るのは、辛い。今まで海斗にはちょいちょい合コンには誘われたが行った試しはない。

「行かない」

「だよな〜。そもそも武命の色恋沙汰は聞いたことないし…、てか武命のタイプの人ってどんなの?聞いたことないわ」

「好きなタイプか」

 海斗なんだよな…。でも言えない。まあ特徴だけなら、いっか。

「すげえ表情豊かな人が好きだな」

「あ〜可愛いよな〜」

 その可愛いってセリフが俺に向けられたセリフになれば、俺はとても幸せだろうな…。


「ごちそうさまでした!」

「なあ海斗、合コン楽しんでこいよ」

「おう」

 俺のこの恋は実らない。そんなのわかってる。でも、いまだけは、高校生活くらいは海斗のことをずっと好きでいたい。

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