放課後

大和滝

つまらないを欲する女

 3月2日。昨日は高校の卒業式で、2年生の私にとってはただの休日だった。そして今日、3年生がいないだけで何事も無い学校生活は変わらず進行している。他の人たちは先輩が卒業したの寂しいとか、清々したとか言っているけど、残念だけど私、酒井由羅ゆらは部活にも入っていないし、特別仲のいい先輩もいない。だから、私はなんの感情も湧かず、今日もただ黙々と黒板に向かって真剣に授業を受けるだけ。そして放課後は1人でどこにも寄らずに家に帰るだけ。

 私はヘッドホンを装着しながらバスに揺られている。なんの意味があるのかわからず、学校に行って、勉教をして、帰る。このルーティングした生活をつまらなさそうとか呟く人がいる。そんなことはないのにね。でも、Twitterにそんなことを呟くから言われるのは当たり前なんだよね。何気ない普段の、人にとってはつまらないことを呟き続けていたらいつの間にかフォロワーが増えていた。フォロワーが増えるとリプも増えて、色んな人から「つまらなそう」って言われる。私はそれを求めてる。

 そんな私は一体何がしたいんだろう。


下校中。昨日は三年生が卒業した。まあ私に先輩はいないから今日もただの日だった。今割と好きな曲流れてる。


 またどうでもいいこと呟いてる。きっと家に帰る頃にはリプが来てるだろうな。

 私はスマホを閉じて目を閉じた。

 この曲も割と好きなだけ。すごく好きな曲なんてない。つまらないかな。でも、刺激なんていらない。きっと私にはそんなのない。これからも今みたいな生活が続くだけ。それをきっと私は望んでいるんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る