嘘でも言えない
綺麗な桜が咲いている。今日は海斗と一緒にファーストフード店に寄り道をした。海斗は俺の目の前でダブルミートバーガーを頬張っている。海斗はなんでも美味しそうに食べる。そういうとこがすごく愛おしく見える。
「あ、そういえば武命…。お前に言っとかないといけないことがあるんだよね」
「どうしたんだ?改まって」
「あのさ、俺の寿命はあと半月なんだよね」
「なぜ?」
「なんか、ようわからん病気で、ドクターが言ってた」
「へー」
わかりやすいな。今日は4月1日。エイプリルフールだから海斗が嘘をついてくるのはもう予想できていたから、驚くことはない。
「あ、あとさ、最近イタリアのほうでめっちゃ強いゾンビが増殖してるんだってさ」
「そうなんだ。知らなかった」
「でさ、今ゾンビたちは海を渡って日本を攻めに来るんだってさ。大体半月後くらいに着くらしい」
「大変になるな」
「まあその時は俺が守れるだけ守ってやるよ」
「頼りにしてるぞ」
急にゾンビがでたか。てかなぜにイタリア?宗教すら違うぞ。だけど、海斗に守られてみたい気持ちもあるな。大いにあるな。
「あとさ〜、半月後にばっかデカい隕石が落ちてきてさ、地球は粉々になって滅びるんだってさ」
「ヤバいな」
「だよな。世界の終末だな」
「寂しいな」
半月後はもはや祭りだな。てか結局地球もろとも壊れるなら、ゾンビは噛ませ犬じゃねえか。俺もちょこっとからかってやるか。
「あと半月なのか〜俺ら…。本当に寂しいな。今までありがとうな」
「お、おい武命?」
「なんだよ、寂しくねえのかよ。せっかく俺、お前とも仲良くなって今もこうして放課後に食って帰るような仲なのに、もう終わりなんだぜ。寂しすぎんだろ」
こんくらい言えばいいかな。
「バッカだなぁ。今日はエイプリルフールだぜ!嘘だよ嘘」
「え、嘘なのか⁉︎」
「そうだぜ。いや〜嬉しいなぁ。ここまでハマってくれると俺も楽しいぜ」
「なんだ。良かったぁ嘘で。でもひどいな海斗…、本当はエイプリルフールって午前までしか嘘ついちゃダメなんだぜ?そういうルールがあるんだってさ」
「あ、そうなのか。じゃあ俺だいぶルール違反しちゃったな。来年は気をつけるわ」
「あ、そうそう。このルールを破った時は、その嘘は本当になるんだって。あれ、じゃあ今の全部本当になるってこと?じゃあ…」
「え…、俺の嘘が本当になったら…」
半月後…
日本にはゾンビの大群が海を渡って押し寄せてきていた。ゾンビは日本の人々を喰らって、またその人間もゾンビとなり、日本は侵食されていた。
「武命!まだ生きてるか!噛まれてないか!?」
「ああ、なんとか!俺の後ろにいてくれ、俺がこのマシンガンで絶対守るからな!」
「ありがとう」
ゾンビは唸り声をあげながら海斗と武命に向かって寄ってくる。しかしおかしな点があって、ゾンビ達は唸り声に混じってたまに言語を放つようだった。
チャ…オ…
マン…ジャーモォ
「武命、あれなんて言ってるかわかるか?」
「えっと確かチャオは、イタリア語での挨拶で、マンジャーモってのはいただきますって意味だった気がする」
「は!俺らを食べる気だな。そうはいくかよ!!…う!!」
海斗は急に苦しみだしうめき声をあげて倒れてしまった。
「海斗!どうしたんだよ!」
「悪い、武命…。俺、病気でさ…、これ以上は、生きれなさそうだ…。守ってやれなくて、ごめん」
海斗は静かに息を引き取った。
「海斗ーーーーー!!」
武命の悲しみなどどうでも良くゾンビ達は変わらずゆっくりと武命の元へ近寄ってくる。
もうダメかと思った瞬間、霧かかった暗い空を強い閃光が照らした。その光は消えることなく大きくなっている。近づいている。
音は爆音となり鼓膜などはとうに壊れてしまった。
…そして
地球と衝突した光は、地球を宇宙の塵と変えてしまったのであった。
海斗の顔は真っ青になっている。きっと自分の吐いた嘘が真になった世界を想像でもしたんだろうな。
「嫌だ!!ごめんなさい!もう二度と嘘はつかないので許してくれよ〜!俺もっと長生きしたいよ〜」
海斗こそ騙されやすいよな。単純だなぁ。流石に嘘って教えてあげないとな。
「海斗、嘘だよ」
「ほんと?隕石落ちない?俺死なない?」
「死なないよ。午後の嘘は本当にはならないから安心しろ」
「良かったぁ」
本当にバカっぽくて、可愛いな。
「あれ、もしも…午後の嘘が本当になるのが本当だとしたら…」
ん?またなんか言い出した?
「午後の嘘が本当になるっていうことが嘘ってことは、それが本当になるから…結局は嘘が嘘になるのか…?」
おい、コイツは何を言っているんだ?
「じゃあやっぱりゾンビは出るし、俺は死んじゃうのか!?」
あーあ、こりゃダメだ。今コイツに好きだって言ったら嘘なのか本当なのか曖昧にできるかもな…。なんて、言えないけどな。
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