777文字で完結させる挑戦 第一回本屋

木村空流樹ソラルキ。

第1話 本屋の愚痴

「これの方が優先順位高いだろう!」

 35歳男の店長が怒鳴り付けた。又癇癪だ。

 社員の山下美和やましたみわは嫌な顔をした。久しぶりに日勤に出て来て、破棄ダンボールの束が気になる様子の店長。

 今検品が終わり、本のシュリンクを美和が掛けていた。担当社員がシュリンクの皺が駄目だと破いては掛けていた為、皆は嫌がった。

 数名補充コミックの為にレジ横の作業スペースで漫画を持ってゆく。

 若めの30代の女子パートが片付けた。

「仕事が出来る人は違うね!」

 店長がお気に入りの彼女を褒め称える。

「なにが効率の悪いやり方をして楽しい?」

 店長は作業スペースに立って、大量の漫画の背表紙から酒英社を取り出し自分用に横に積んだ。パート達は彼が来る前に棚に向かった。彼は棚順の出版別にしている。一人が作業スペースに戻ってきた。

「これ。」

 店長が青年誌を渡した。パートはコミックを受け取ると棚の前まで行き、重そうに平台のコミックの上に置いた。

「山下も棚出ししたら?」

 美和がどいた場所のシュレッダーのレバーをLOWからHIGHへ入れた。担当が美和に詰問してくる姿が想像出来た。

「ダンボール捨てました。今度は何をしますか?」

 美和は作業スペース前に出た。店長は無言で一番皆が触りたくないライトノベルのコミックを渡した。出版社別でも難しく、時間が掛かるのである。

 戻って来たパート達に無言でコミックの束を渡す。その横でシュリンクしている女子パートと楽しく喋っている。

 作業台からコミックがなくなり、店長が酒英社棚に向かう。売上が高いので目線の棚にあるので探しやすい。美和は溜息をした。


 その何時間後、役職が来てスタッフ室手前にあるダンボール箱ストックの上に、酒英社が大量にあるのを見て叫んだ。

「万引きだ!」

 美和は店長のコミック補充の時の物だと分かった。通路に売れ筋の酒英社をダンボールに入れて保管している。店長は黙っていた。

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777文字で完結させる挑戦 第一回本屋 木村空流樹ソラルキ。 @kimurasora

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