俺の為に死んでくれるか?

神石水亞宮類

第1話 俺の為に死んでくれるか?




“俺の為に死んでくれるか?”




私は突然! 付き合っていた彼にそう言われる。

彼は自分の会社を作り、その会社が倒産して多額の借金を背負った。

彼の借金は、“総額1億円。”

今は複数のバイトで、少しづつだがなんとか借金を返済し続けている。

でも? 返済のお金が少し足りない時は、彼は私にお金を借りに来る。




【ピーポーン】


『はい!』

『・・・俺。』

『お金?』

『ううん。』

『いくら足りないの?』

『3万円。』

『分かった、少し待ってて。』

『・・・あぁ、』


【ガチャ】


『いつもごめん。』

『はい、3万円。』

『ありがとう、バイトのお金が入ったら直ぐに返すから。』

『・・・ううん、』

『じゃあ、』

『・・・・・・』




・・・だんだん彼が私に会いに来るときは、【お金】の事だけになった。

私からお金を受け取ったら、彼はそのまま帰る。

私の部屋に入る事無く玄関先で帰っていく彼。

本当に、“私と彼は付き合っているのか?” 疑問すら感じる。



彼も彼なりに必死だったのかと今は思う!

バイトを何個も掛け持ちして、なんとか借金の利子を返しているという

状態だったからだ!

未だに一向に減らない彼の借金。

彼は随分と追い込まれていたのだろう。

そのうち、掛け持ちしていたバイト先も次々辞めていく。

バイト先の店長と口論になったり、バイト仲間と喧嘩したりしてクビに

なっていったのだ。

そのうち働く事もなく、自分の家でお酒ばかり飲むようになった。

借金の返済日が近づいて来ると? “私にその借金のお金を全て借りる”

ようになっていったのだ。



【ピーポーン ピーポーン ピーポーン】


『誰?』

『俺だ! 頼む、お金を貸してくれ!』

『・・・い、いくらなの?』

『取り合えず、“20万円いるんだ!”』

『えぇ!? 20万も、、、!?』

『頼む! “貯金があるんだろう?”』

『もうお金ないよ。』

『頼む! お前だけが頼りなんだよ!』

『・・・ちょ、ちょっと待ってて。』

『あぁ! 待ってる。』



【ガチャ】



『ここで待ってて! コンビニのATMで下ろしてくるから。』

『いや、一緒に行くよ。』

『・・・ううん。』

『じゃあー行こうか!』

『・・・・・・』



私はマンションから一番近いコンビニのATMで20万円を下ろし

彼にその場で渡した。

彼は封筒の中身のお金を確認して、私にこう言って帰って行った。



『ありがとう、助かったよ! “また頼むな。”』

『・・・・・・』



私はこの時、彼にああ言われて! “私の中の糸が切れた。”

私は彼にとって、“ただの金ずるでしかないと!”

彼は私を全く見ていない!

既に彼女でもなければ、恋愛対象でもなかった。

お金を彼に都合よく渡してくれる女。

“私は、はっきりと目が覚める!”


【ピーポーン】



『・・・ごめん、私と別れて?』

『えぇ!?』

『もう付き合っていられない!』

『じゃあ、“俺の為に死んでくれるか?”』

『えぇ!?』

『保険金をかけてほしんだ! “1億、1臆でいいんだよ!”』

『もう帰って! 二度と私に会いの来ないで!』

『無理なのか? 大丈夫だろう? 出来るよな!』

『帰って!』

『・・・“また来るよ。”』

『・・・・・・』





 *





・・・私は直ぐに部屋を引っ越す事にした。

もう彼とは二度と会いたくない!




私が引っ越して3カ月、私は彼とあれから一度も会っていない。

やっと新しい生活がはじめられると思った。

私は気持ちが少し前に向いていた。



【ピーポーン】


『はーい!』

『俺、どこへ遊びに行ってたの?』

『えぇ!? どうしてココが分かったの!』

『俺は何でもお前の事ならお見通しだよ。』

『・・・・・・』

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