懐かしい"におい"と共に、あの日の記憶が甦る――――。

小学四年生の夏。

ショッピングモールの本屋さん。

突然、「私」に声をかけてきたのは、かつて「先生」だったひと。
先生は親とはぐれ、本屋にいた「私」を連れ出し、ある場所へと向かった。
そこには、十四才の家出少女、「アヤメさん」がいた。

「私」は家に帰りたいと言う気持ちにはならず、自分に良くしてくれる「アヤメさん」と、彼女をなんとかしてあげたいと思っている「先生」との、奇妙な同居生活が始まった。


作者さまの感性が際立つ、現代ドラマジャンルの、短編小説です。


少女はなぜ、記憶の欠片を辿り始めたのか。
彼女が記憶する"におい"に、どんな意味があるのか。
先生はなぜ「アヤメさん」のために色んなものを犠牲にしたのか。

その意味を知る時、もう一度読み返したくなる、そんな作品です。


ゆっくりと心に余裕のある時に、じっくり読んで、その世界観を感じでいただけたらいいなぁと思います。