おまけ『あとがき』
KAC2023 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2023~に参加した短編を集めてみました。2021と2022も参加したので、今年で三回目ですね。
なので例年とは違って『連作』を意識してみました。
テーマは「国」。
人物よりもその土地や風習、特色を意識しました(こうなってくると来年は人物がテーマになるかもしれません。それとも続編もの?)。
国であったり町であったり、村や森、などなど……、お題に合いそうな舞台を選んでいます。
連作とは言いつつも、同一世界観であるだけで、時系列の繋がりもキャラ同士の繋がりもないので、どれから読んでも問題はないです。
そんなわけで、それぞれのお題から生まれた短編のあとがき(狙い&反省)です。
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第一回『本の大国』…お題・本屋
この時点ではまだ連作にするつもりはありませんでした。
イベントが始まり、お題が発表されて、思いついたネタを書いてみただけです(なので私からすれば、普段から短編を発表しているので、いつも通りとも言えました)。
本屋と言われたら、まず本屋は出したくなかったので、世界から本屋が『消えた』理由を書きました。本の大国が世界中の本を独占したことで、他国の本屋が消えてなくなってしまった……しかし、本という媒体がなくなっても、内容まで独占することはできない――。
知った知識は、口頭で広められますし(配信など)、本を通さなければ、商品のラベルなどで他者に譲渡することもできるわけで。
結局、本を独占した本の大国は、『本』という膨大な物量だけを抱えた国になってしまった、というわけですね。
本の大国は他国よりもちょっと沈んでいるのかもしれません。
薄い紙でも、重ねていくとかなり重たくなりますからね。
ここで『大国』というワードが生まれたので、じゃあ今年は色々な『国』を書こう、と思いつきました。
この時はまだシンプルなお題しか出ないだろう、と思っていたのですよねえ……(二年も経験しておきながら忘れてしまっていた……お題は複雑になっていくのだ)。
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第二回『ぬいぐるみ諸島』…お題・ぬいぐるみ
ぬいぐるみの国――にしなかったのは、一回目と『国』で被るのを避けたかったからです。
まあ、ぬいぐるみと聞いて連想したのが『呪いの人形』であって、じゃあ『国』ではなさそうだ……と思い、島にしました。
村でも良かったのですけど、登場するキャラのイメージでは、村よりも島だろうな、と。
諸島にしたのは島だと狭そうだったので。いくつもある島で、作れるぬいぐるみに差が出たりすると面白そうだ、といった意図もあります。
ぬいぐるみ諸島……、手縫いぬいぐるみ師が多くいる島になります。
ぬいぐるみを独占しているわけではなく、『ぬいぐるみを作ってくれる職人がたくさんいる島』です。そして同時に、『呪術使い』であり……、実在する人物そっくりに作られたぬいぐるみに呪術をかければ、モデルとなった人物を苦しませることができる――
ただし、外傷は与えられません。
ぬいぐるみに釘を打てば、打った部位が近い将来、使い物にならなくなる……。
遅効性ではあるものの、確実なのが呪術の怖いところです。
そういう仕組みを知っていると、じゃあ自分そっくりのぬいぐるみが店に置いてあったら?
たとえ現在、呪術をかけられていなくとも、めちゃくちゃ怖いのでは? というお話でした。
その後、余裕があったので書いてみました……『お題・ぬいぐるみ』で二本目の短編。
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第二回『口出し無用、兄の【呪い】と島のぬいぐるみ』
一本目は怖さを演出したので、こっちでは怖い中でもほっこりする感じに。
呪術を使い、ぬいぐるみを操作するのは同じですが、狙った部位を動かなくさせることができるのであれば、同じ要領で『癒す』こともできるのでは?
疲れ切った体を労わって、呪術を使いながら、アイドルとして活動する妹を癒そうとする兄のお話です。ここでちらりと出てきたエンタメの国……、汎用性が高いので出してしまいがちですが、できるだけ使わないようにしよう、と決めたのはこの回でした。
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第三回『小人たちの【わがままトイ・ランド】』…お題・ぐちゃぐちゃ
難易度が上がった感じです。
ぐちゃぐちゃの国……は考えましたけど、そのまんま過ぎると思ったのでボツです。
ぐちゃぐちゃから連想するものと言えば? ……私の場合は臼の中、『なにか』を杵で潰してかき混ぜる、という絵が浮かんだので採用しました。
じゃあ潰すものはなんだろう……、作中では人間ということになっていますが、実際は町とか村をそのまま、まとめて潰しています。
なのでそこに住んでいた人間たちも当然、ぐちゃぐちゃになるわけで……残酷描写ありの設定になっているのはここのせいですね。
ジャンルが異世界ファンタジーなので、登場できるのが人間だけという制限もないわけですし、別の種族も出したいなと思っていました。
町や村を潰すなら、巨人でないと無理……、巨人が出てくれば、じゃあ小人もいるよね、ということで小人をメインにしました。
なんだか優しいイメージ(主観的なものですが)がある小人ですけど、純真無垢で残酷的なのは、虫を分解する子供とも言えるのでは……?
興味心や探求心であるとは言え、対象が動物から人間になると、一気にサイコパスの感じが出てきますね。
分解された人間のパーツをかき集めて、自分だけの『最強の人間』を作る――という遊びは、男の子なら誰もがやったであろう『クリエイション』要素です。
経験したことがあれば、そこに悪意がないことは実感できると思います。
他の子に差をつけて一番になりたい。
そんな小人たちの、いま夢中になっているゲームだったわけですね。
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第四回『酒豪都市』…お題・深夜の散歩で起きた出来事
これはすんなりと完成しました。
深夜の散歩で起きた出来事を、「……なんだっけ?」と探るお話にしようと。
出来上がったのは、深夜の記憶がないのをいいことに、深夜の記憶を捏造してくる男たちがいる、という形になりましたけれど。
その状況を作るには記憶を失くす理由が必要で……――前日の記憶がない、と言われて、まず浮かんだのが、『お酒』。となれば、もうお酒の国しかないですよね。
お酒の国だと捻りがないので、考えている内にしっくりきた『酒豪都市』に。
酒豪でないとついていけない都市になりました。
お酒に弱い人は他人に搾取され続けてしまう……、そして同時、弱みを見せることで得るものもある、という生き方をしている人もいる――
一人称小説です。
語り部のキャラは個人的にはお気に入り。
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第五回『死者の森/白骨死体と筋肉自慢』…お題・「筋肉」
筋肉。マッスルとか力持ちとか、膨らんでいく方向へ偏っていたので、いっそ逆側へ舵を切ってみようと思い、筋肉がないことで筋肉を表現しよう、と試みました。
で、白骨死体です。
筋肉がどこにもねえ。
個人的な意見ですが、何事も、結果よりも過程を重視します。
結果が振るわなくとも、その過程で得られるものが一つでもあれば勝ちなのでは? 得した、損をした――そういうことではなく、たとえ損をしても、『この行動で損をした』ということが分かっただけで得をしている気がします。
それはともかく。
筋肉は作ることもそうですが、維持するのも大変で。そりゃ立派な筋肉があれば自慢したくもなるでしょう。中にはその自慢が鬱陶しいと感じる人もいるかもしれませんが、自慢してもいいくらいには努力をしているのが、筋肉自慢たちです。
筋肉を作り、維持する精神力が評価された白骨死体、というお話でした。
なにか偉業を成し遂げていなくとも、立派な学歴があれば良い会社に就職できる、みたいなものでしょうか。
やり遂げる力。諦めない心。
筋肉のようには見えなくとも、絶対に評価されるべき部分でしょう。
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第六回『水の都のラッキーナンバー』…お題・アンラッキー7
アンラッキー7って、なに? というところからでした。
ラッキー7の逆、という認識で良かったのかな?
調べてみたら、ラッキーナンバーは国によって違うんですね。
ある国では7が不幸の数字だったり、13が幸運の数字だったり。国をテーマにしている中でこんなことを知ってしまえば、利用しないわけにはいかなかったです。
国を渡る必要がある以上、複数の国を登場させました。
ギャンブルの国から水の都へ(キャンピングカーの中の占い師……これも一応、占いの館になるのでしょうか)。国、大放出でしたが、メインは水の都です。
水着で出歩ける国なので、水没した国というよりは、常夏のイメージ。
もちろん半分ほどは水没していますし、ボートで移動するような国でもありますけど。
国を渡ったことで、ラッキー7からアンラッキー7へ切り替われば、舞い下りる幸運が、降りかかる不幸へ切り替わる。
作中ほど、急に幸運と不幸が切り替わるわけがないですが、前半に登場した占い師の力が影響しているのかもしれませんね。
異世界ファンタジーならではの魔法の力かも。
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第七回『雲上庭園『管理人』・天使ホロロの【言い訳】封じ』…お題・いいわけ
ラストです。
今年は777文字ぴったりで書き上げるとなにかがあるらしい……、とのことなので、できたらやろうくらいの気持ちだったのですが、最後となれば一回くらいはぴったりに書きたいと欲が出ました。少ない文字数の方が難しいのに……。でも上手くできた方では?
書いてみて、初回で830字くらいだったので、あとはちょっと削ればぴったりにできそうだったので挑戦してみました。
お題が「いいわけ」なので、いいわけの内容を書いてしまいがちですけど、文字数のこともありましたので、『言わない』ことで『いいわけ』を見せてみました。
喋ればなんでもかんでもいいわけにされてしまう……、ミスをした理由を答えただけなのに、「いいわけしなくていいから」と言われた実体験から。
……口から出た言葉の全てが『いいわけ』とされてしまうなら、じゃあ最初から黙っていれば、絶対に『いいわけ』と決めつけられることはない――
まあ、それで事態が進展するわけがないですし、『いいわけ』をした時よりも悪化しそうな気もしますが。
国、というテーマとしては、『雲上庭園』になります。
色々な国を周ってきて、最後は地上ではなく天上――
ファンタジーなので、やはり空は必要でしたね。
ラスト、ということで、雲上庭園はぴったりだったのでは?
〇
――というわけで「あとがき」も終わりです。
一年目、二年目と、参加した短編を詰め合わせた『短編集』を出していましたが、ただ集めただけになってしまっていたので、なにか「おまけ」的な要素をくっつけたいと思い、今回はあとがきをつけてみました。
直近で、『エッセンス・エッセイ』というシリーズも始めていましたので、それに沿って作ったようなものですね。
もしかしたら少数派なのかもしれませんが、気になる作品があったら、まず作者のページに飛ぶんですよね。この作者はどういう人なのだろう、と気になってしまうので。
その人が色々と発信をしている人だと、ついつい読んでしまいます(近況ノートを見てしまいがち)。だからというわけでもないですが、作品ばかりを書くのもいいですが、そろそろ作者としての顔も小出しにしていくのも、これはこれで一つの作品になるのでは? と思いました。
自分の頭の中の整理と同時に、こういう『あとがきが好きな人』を満足させられるなら、書いておき、多数のコンテンツの中に紛れ込ませておくのも、損はないかな、と。
いつでも見られるわけですし。
それに、好まない人は読まなければいいだけですからね。
絵や映像と違って、なにもしていないのに目に入る、ということはないわけで。
まあ、それが手軽に入りやすいことの障害になってしまっているのもありますけど……、やっぱり小説は読まないと分からないですからね。
だからこそ、
はまると地下深くまで、のめり込む。
―― おわり ――
ドリームランド/KAC2023【短編集】 渡貫とゐち @josho
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