あーん

「知ってる? チキュウってね、すごくあまいのよ」

 

 めぐるが上目遣いでそう言う。

 まだ六つの幼い妹。この春から小学校に行き始めたばかりなのに、あまりに大人びていると周りの大人がよく話している。

 言動が子供らしくないそうだ。家にいる時はこうして子供らしい突拍子もないことを言うが、外だとそうでもないらしい。

 

「ふぅん。食ったのか?」

「まだよ。だって、今おにいちゃんはチキュウにいるじゃない。めぐるが食べてたら、もうチキュウはないはずでしょう?」


 こんなを言う子の、どこが大人びているのだろうか。年相応だし、おふざけだってするし。そりゃあ少し言動が他の子よりマセてるかもしれないけども。

 不気味だの神童だの子役になれだのと、好き勝手言われる筋合いはどこにもないはずだ。

 

 腹が立つ。地球は甘いとか言ってるんだぞ、めぐるは。

 これが年相応じゃなかったらなんだと言うのか。

 

「だからね、これから食べるの。ゆっくりゆっくり溶かしていって、おにいちゃんたちがみーんな死んじゃったあとに、一気にごっくんするんだよ」

 

 無邪気に笑う。

 こういう物騒な言葉を使うようになったのは、いつからだっただろう。全く。

 

「おい、めぐる。外では使うなよ、そういう言葉」

 

「――あたりまえじゃない」

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珈琲の森 藤原かふわ @book_cafe

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