ピンポンダッシュの春 🏠

上月くるを

ピンポンダッシュの春 🏠





 この性格、なんとかならないものかしらねえ……自分でも呆れているヨウコさん。

 毎月朔日の暁はおちおち寝ていられず、その理由は「近況ノート」の更新。(笑)


 月に一度の更新と思うと、草木も眠る丑三つ時には目がパッチリ開いてしまって。

 ベッドにいるのも退屈なので、えいやっと起き上がって、パソコンを開くのです。


 そういえば、別れた人はヨウコさんのこういう点を、ひどくいやがっていました。

 正確に言えば、最初は歓迎していたのが、しだいに嫌うようになったのですけど。


 つまり、自分や家族のため生真面目に家事に没頭するのはいいが、凝り性の延長として妻自身の趣味に熱心なのは面白くない……大方の夫族の本音かも知れませんね。




      🌃




 それはともかく、連載と単発、それに気になっている「近況ノート」を更新すると打てば響くがごときタイミングで☆と♡、さらに応援コメントの通知が届きました。


 送信してくださったのは親しくしていただいている作家さんで、あの方も眠れずに起きていらっしゃるのだと思うと、夜の不安がやわらいでいくような気がしました。


 テレビの人生相談で美輪明宏さんが「上辺の友だちより、クリエイティブな趣味でつながった友人の方が、ずっと絆が深い」と言っていらしたことを思い出しました。




      🧵




 少し仮眠してモーニングカフェに行くと、開店早々なので窓際が空いていました。

 バッグから取り出したのは先日から大切に拝読している年少の女性作家の文庫本。


 家族や学校をテーマにしたオムニバスで、読みかけの短編は、通学路にある家で、新学期、新一年生にピンポンダッシュされるのが楽しみ(笑)という老婦人の物語。


 いつの間にか八十台になっていて物忘れも少し……でも、子どもや若い人が好きで戦時中や戦後の思い出と現在とを行ったり来たりしながら、ひとりで暮らしている。


 その老婦人が内心で呟きます、知らない人に「おばあさん」と呼ばれたくないな。

 そして、ある出来事をきっかけに、そのことをようやく口にできるのですが……。




      👩




 おおいに共感しながら、ネット小説に同じことを書いた記憶がよみがえりました。

 他者から「おばあさん」とか「おかあさん」とか呼ばれるのはうれしくない、と。


 すると、一度も交流がなかった男性から「ほかに呼びようがないから仕方ない」と反論が届いたので、即座に「あなた、呼び方を考えてよ」打って返しました。(笑)


 期待した再反論はありませんでしたが、異論には自分の代替案を用意しておくのが大人のマナーだよね、仕事時代、若いスタッフに話したことを思い出していました。


 物語の老婦人の年齢にはまだ間があると思われるヨウコさんですが、目も頭も心も元気なうちにたくさんの宝物を蓄えておくため、帰路、書店へ寄ることにしました。




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