第一話『マーライオンはシンガポールの名所だが実際に行った事がある奴はあんまりいない』3
そして一時間前。
「カーッ! これ見せられた時はてっきり『この中から好きな武器を選べ』的な展開だと思ったのによォー。埋めてこいなんてそりゃないぜー」
「サンティノ、あんまり振り回すと危ないよ……」
二人の少年は革袋を携えて、人気のない建設途中のビルの中を歩いていた。正確には革袋を背負っているのはマイクで、ソニーは中から抜いたであろう銃を一丁手に掲げていた。
「使用済みつってたからどーせ弾入ってないんだろー。はァ〜俺も早く銃とか撃ってみてェなァ、バンバーン」
パラララッ!!
ソニーが引鉄に指をかけると、軽い音を立てて手にしていた
射撃を受けた近くの天井から、パラパラとコンクリートの欠片が落ちてくる。
「弾入ってたわ」
「サンティノーッ!!」
「悪かったってー!!」
キレたマイクが革袋を振り回しながらソニーを追いかける。弾の一発はマイクのこめかみを掠めていた。
「まったく……サンティノは普段から緊張感ってものがないんだ」
「ごめんて〜」
「僕らもうカタギじゃないんだぜ? 何が起きるか分からないってハリスさんも言ってたろ」
「でもこれ捨ててコンクリ流し込むだけだろ? あ、あれじゃね?」
二人の視線の先、建設現場の一角を占めるエリアで巨大なミキサーが低い音を立てて回転していた。
「そりゃ穴に放り込んであの機械のスイッチを押すだけって言ってたけどさぁ。他にも言ってたろ、妨害があるかもって」
二人のいる建設現場自体はジェノヴェーゼファミリーの
「まじ? 聞いてなかった」
「サンティノ……キミってやつは……」
「妨害って、じゃあさっきから
「え゛?」
ソニーはメガトン級の馬鹿であった。
「へぇ……気付いてたってのは意外だな」
「それを早く言えよ!」というマイクのツッコミは別の人物の声によって喉元に押し込められた。
マイクはこめかみを流れ落ちる汗を感じながらゆっくりと振り返る。
まだ日没には早い時間であったが、照明のない建設現場の薄暗がりに、その影はシルエットは揺らしていた。
「へぇ、こっちの方はけっこうカワイイ顔してんじゃん」
ヴヴヴ……ヴィィィィイイインッ!!
シルエットが勢いよく腕を引くと同時に、チェンソーの獰猛な咆哮が響き渡る。
「ちょっと早速で悪いんだけどさァ」
影は、
「試しに死んでくんない?」
バビロン 紫檀(むらさきまゆみ) @takahashi_shitan
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