最終話:ふたりの愛は永遠。
俺の実家からの帰り、マリアの完治報告を兼ねて及川さんに会いに行った。
及川さんはマリアが元どおりになったことを喜んでくれて、お祝いだと言って
その晩ディナーに誘ってくれた。
「あの・・・及川さんつかぬことをお聞きしますが・・・」
「マリアの治療費って言うか・・・検査料って言うんですか?」
「それって・・・その・・・?」
「大丈夫ですよ・・・無料ですから・・・」
「マリアさんをご購入なさる時、ちゃんと保証保険に加入されてますからね」
「まあそれに今回は、初期点検ということにしておきました・・・」
「費用は一切発生しません」
「ああ・・・タダなんですね・・・」
「どのくらい請求が来るのかって、ちょっとビビってたんです」
「シューちゃんタダって?」
「無料って意味だよ・・・マリアの検査費用はいらないんだって」
「ですが、もう二度と今回のようなことがないよう気をつけてくださいね」
「このくらいで済んで運がよかったんですよ」
「はい、これかちゃんと気をつけます」
「私にとっても長尾さんとマリアさんは他に類のない稀有なサンプルなんですから」
「サンプルって・・・マリアが僕のパートナーになったことで、もうモニターは
終わってるんじゃないんですか?」
「いえいえ・・・ガイノイドはレンタルが一般的ですから。
人間は人間とのカップルが普通ですからね。
人間とガイのイドのカップルなんて、珍しくてあまり聞かない例ですから。
大いに参考にさせていただきます」
会社のスタッフだけじゃなく、俺たちも及川さんに監視されてるのか?
まあ、いいけど・・・それだけ気にしてくれてるってことなんだろうから。
俺たちの生活さえ干渉されなきゃいいんだ。
で、土曜日の会社が休みの時、俺とマリアは小野寺さんちにも顔を出した。
「よく来てくれましたね」
「マリアさんが元どおりになってよかったです」
「どうも、その節はご心配おかけしました」
「マリアさん、よかったですね・・・」
「はい、ありがとうございます」
「今回のことがもしアイラだったら元には戻ってなかったかもですね」
「中原博士のおかげかもしれません」
「マリアの記憶には中原博士の生前のお嬢さんの記憶が移植されてる
らしいですからね」
「娘さんを蘇らせたいって一心って言うか、執念でマリアを完成させたのかも
って思います」
「それに、なんと言ってもマリアの体内にいるナノマシンの活躍が大きいです」
「それも中原博士のおかげでしょう」
「そうですか・・・マリアさんは世界でただ一人の存在なんですね」
「そう言えば、おふたりがカップルになって、まだお祝いを言ってなかったですね」
「改めて、お祝い申し上げます・・・おめでとうございます」
「何か、お祝いを送っておきますね」
「お気遣いなく・・・」
「あの、どうせいただけるならシューちゃんとペアで使えるものがいいです」
「マリア・・・」
「あはは・・・いいですよ・・・何かお役に立てるモノを見繕っておきますね」
なにわともあれ、俺とマリアは元の生活が戻ったわけで、忘れがたいアクシデントに見舞われたけど、それもまた俺とマリアの人生。
この先もなにがあるか分からない。
君子危うきに近寄らず・・・。
これからはマリアに危険なことが及ばないよう俺は全力でマリアを守って、
仲良く生きていこう・・・そう誓った。
ふたりに平和な日々がもどってよかったです。
ただふたりにとって唯一の隔たりがあるとすればそれは歳というハンデ
でしょうか。
修平が歳を取っても、マリアはいつまでも若いままです。
彼が40歳になっても50歳になっても・・・マリアは歳を取らないですからね。
だからと言って修平とマリアは終生別れるってことはなかったようです。
その後、修平はマリアに看取られて、己の寿命を全うします。
マリアも自分の人生は永遠に修平とともにあると思っていました。
だから修平の亡骸のそばに身を横たえて、自らの機能を停止したのです。
ふたりの愛は永遠だと言うように・・・。
それを自殺と呼ぶのか自壊と呼ぶのかは分からないけれど・・・。
でも、それはまだまだ先の話。
修平とマリアはこれからも、さまざまな体験をして、泣いたり笑ったり
もういいんじゃないの?ってくらいいっぱいエッチして、ラブラブで紆余曲折な
日々を送っていくのです。
「じゃ〜支度するね・・・」
「ご飯じゃないんだ・・・やっぱりそっちなんだね」
「お願い、もう二度と私を離さないでね」
「ああ、なにがあっても離さない」
「俺は死ぬまでマリアを愛し続けるから・・・」
そう、マリアはいつだって修平との幸せを夢見る、愛に満ち溢れた
世界でただ一人のエッチが飯より大好きな最高のセクサロイドなのです。
おしまい。
笑って!マリア。〜セクサロイドだって夢を見る〜 猫野 尻尾 @amanotenshi
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