HEIWAのマグロ

まめでんきゅう–ねこ

新兵器マグロミサイル

ある日突然全世界へ宣戦布告したミート人民共和国。


理由は領土を増やすためである。流石に1つの国vs.全世界は無謀だと思われていた。


しかし、ミート人民共和国には、ここにしかない、現代兵器をも超越する謎の兵器があったのであった。


3年後、ついにフィッシュ人民共和国以外の国は全て征服されてしまった!


この星の国は全てミート人民共和国のものになってしまう!誰もがそう思った。


しかし、フィッシュ人民共和国には、たった1つ、ミート人民共和国の弱点である、あるものを持っていたのだ!











俺の名前は狩野かのはるか

たった1つだけの、ミート人民共和国の弱点【マグロミサイル】を持っている者だ。


ズドォォォン


敵の兵士がもうすぐそこまで来ているらしい。いくらマグロミサイルがあるとはいえ、安心できない。


このマグロミサイルは投げると猛スピードで敵に体当たりしに行く、いわば追尾性能のあるミサイルだ。


俺はこのマグロミサイルの開発者である。つい最近開発したばかりなので、発表はしたものの、まだ量産してない。つまり、この世に持っている人間はただ1人というわけだ。


「見つけた!」


ミート人民共和国の兵士だ!銃を構えている。


「⁉︎…おりゃっ」


俺は咄嗟にマグロミサイルを投げた。マグロは兵士に全身で体当たりした。


「うわぁ⁉︎」


ズドォォォン


「……やったか……」


マグロミサイルは投げた後、ぴちぴちと地面を跳ねるだけで、手元に戻ってくるわけではない。いちいち取りに行かなければならないのだ。


銃に比べて、かなり扱いにくいし、何より腕を動かす必要があるので、はっきり言って弱い。


しかし、この武器以外では、ミート人民共和国に勝てない。


やるしかないわけだ。




ブォォォォォォォォォォン


敵の赤い車が道路を堂々と通る。軽自動車のような形だが、大きさは段違いだ。

あきらかに人間が乗ることを想定されてない。その車の近くには、巨大なフライパンが空を飛んでいた。


ここをくぐり抜けるのは困難だろう。かといって、マグロミサイルを適当に投げてしまうと、こちらの位置がバレる。そして手元に武器がなくなってしまう。


そして、もっと厄介なのは、敵の車だった。あの赤い車は無人の自動運転。そこが問題だった。

運転士を狙撃すれば、なんとかなるが、無人では、車に傷をつけれるだけで、なんの意味もない。


しかも、あの車は【ソーセージキャノン】と呼ばれる肉の塊を連射する装置を積んでいるのだ。


これはミート人民共和国の謎の兵器の1つ。発射される肉の塊はビルやコンクリートをも破壊するほどの威力である。


そして、車に感知されたら最後。大量の肉の塊を乱射され、我々は何が起こったかわからないまま終わるのだ!


もちろんマグロミサイルで勝てるわけがない。高速で飛ばされる肉の塊に弾き飛ばされる。そして、車は止まることを知らない。

常に動いている的を、大振りして投げる必要のあるマグロミサイルでは、まともに狙撃できるわけがない。

追尾するとは言ったものの、あの速さでは追いつけないだろう。


俺は瓦礫の影に隠れた。車は兵士たちの周りをぐるぐる巡回している。


ズドォンズドォンズドォンズドォンズドォンズドォンズドォンズドォン


すると、車から急に肉の塊が連射された。

肉の塊はビルを突き破り、大量の埃が舞う。

おそらく逃げ遅れた人を感知したのだろう。


しかし、よく見てみると、タイヤ付近はどうやら肉の塊の影響を受けないらしい。

つまり、あの車は長距離特化というわけだ。距離を詰めることができれば、タイヤをパンクさせることくらいはいけるはず。


ようし、それで行くしかない。


俺は車がビルの後ろに行ったのを確認すると、急いで距離を詰めた。


兵士が彷徨いているが、それはマグロミサイルで対処可能。背後から近づければ、マグロで叩いて倒す。

銃で撃たれても、マグロの鱗は銃弾を弾く。つまりマグロを盾にすればOK。




やがて、車が戻ってきた。俺はタイヤ付近の瓦礫に隠れると、タイヤに向かって並行にマグロを投げた。


スパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン


タイヤは破裂し、バランスが取れなくなった車は、横倒しになりながら、道路を滑った。


ズドォォォォォォォォォォォォォォォォンン


かなり目立つが、幸い周りに兵士はいない。普通なら人身事故になりかねない状況だが、相手は無人の車。手加減は必要ない。


…車は撃破……。さっきまで近くにいたフライパンはどこかへ行ったようだ。


そういえば、我々フィッシュ人民共和国にはマグロミサイル以外にも、イクラ型麻酔ボールを撃つ兵器があるはず。

しかし、その兵器が全く見えない。全滅したのか?それでも小柄だったから、逃げ切って残っているものも少しはいるはずだ。


もしかすると前線にいるのかもしれない。いや、前線にいたら、ここまでこんなに敵が来るとは思えない。


となると、やはり全滅か?とにかく、とっととこの街を抜け出したいものだ。


行く宛てはある。ベジタブル人民共和国だ。全世界の国の数、199ヶ国のうち、ミート人民共和国は197ヶ国を制圧したと言っている。残りの2ヶ国はミート人民共和国と、おそらくベジタブル人民共和国だ。


ベジタブル人民共和国は科学技術こそ劣っているが、異空間アナザーディメンションと呼ばれる未だに謎の異空間を見つけ出した国なのだ。


古来より異空間となんらかの関わりがあったようで、とても興味深いが、国ぐるみでその情報は機密とされているため、俺が知っているのはここまでだ。


まあ、そのベジタブル人民共和国が異空間アナザーディメンションへ逃げ込んだと俺は勝手に思っているが、いま思うと未開拓なのにも関わらず、緊急事態だからといってその異空間に避難するのは、現実的ではない。


……パニックになりすぎたな。


だが、だからといってこの国にいたら、生き残れるとは思えない。

ここは希望を託してベジタブル人民共和国に逃げるしかないだろう。


特に故郷を捨てて外国へ逃げるのに抵抗はない。家は破壊され、妻も子もいない俺にとって、このマグロミサイルだけが唯一の相棒だ。

スマホも食料も金もまあまああるし、しばらくは暮らしていける。


しかし問題は名誉。自分で言うのもなんだが、俺は技術者として、まあまあ知名度がある。

そのことはミート人民共和国だってわかっているはず。暗殺を試みている可能性があるので、できるだけ人が少ないところへ行きたい。


まぁまずはこの街を抜け出してからだ!











催眠術を使ってくるカバ型ロボットや、簡易的地ならし、フライパンの群れをすり抜けて、なんとか街の外れまでやってきた。


カバはヤバかった。自害させる催眠術を使ってくるため、マグロミサイルで、自分自身を殴るところだった。

なんとか正気を保って、本当の敵を倒したが………。


簡易的地ならしは自動ミンチ製造システム。

巨人ロボットたちが行進して大地を踏み潰す、某マンガで見たことのある展開だ。

意外とマグロミサイルで破壊できるほどの脆さだったから良かったが、予想以上にスピードが速く、少しでも判断を見誤っていたら、潰されていただろう。


そして、問題はフライパン。地球酸素化ハンバーグを放り投げてくる。

このハンバーグが地面に落ちたら最後、落ちた周囲の地面が酸素と化してしまう。

しかも火力が増すほど範囲が広くなるので、酸素が増えれば、火力が上がり、地獄絵図となる。

これはマグロミサイルに乗って、飛び越えるしかなかった。念のためマグロミサイルに椅子を用意しておいたのは正解だったようだ。これが群れを成して来たのだから、もうたまったもんじゃない!


しかし、彼らも流石にここまでは追ってこないだろう。


ふう、やっと一息つける。幸いなことにここら辺には誰もいない。


「……ふぅ………」


スパァァァァァァン


「⁉︎……」


目の前の景色が変わった。確か目の前には田んぼと小さな店に挟まれた道路があったはず。


しかしここはどこだ?ビルの屋上のようだが………。

街の上空だろう。


「…お、来た来た!」


背後から声がした。恐る恐る振り向くと、黒い鉄球があった。


なかなかツヤがある美しい黒だ……だが、突然その鉄球に口が現れて、美しさが消えた。


「美味しそう………。え、マグロ……?不味そう」

「誰だ……?」

「僕はミート人民共和国のリーダーさ!」


喋っているのはこの鉄球らしい。


とても人間とは思えない見た目…。彼は杭に紐で繋がれているようだ。鉄球の口が頬まで裂く。


「お腹空いた〜〜!晩御飯ごはんの時間だ〜!いただきまーーーーーーす!」


鉄球は大口を開けて、飛びついてきた!俺の本能が避けた。


ガツーーーーーン!!!!!!


「あれ?……なんだ、避けたのか〜。人間にしてはなかなかやるじゃん」


人間にしては………ということは、おそらく彼は人間じゃない。


このマグロミサイルで人間以外を倒せるのだろうか?リスクが大きすぎる。しかし無抵抗では負ける。


このマグロミサイルはミサイルと言っても爆発しない。鈍器がぶつかってくるだけの、至ってシンプルな武器だ。

……………相手は鉄球だ。


「まぁ、逃げても意味ないと思うよ」


何かの起動音が鳴った。すると床から赤い目のついた白い球体が2体現れた。


「さぁ、食事の時間だ!」


ワンワンワン!!!!!!


奴は口を開けて突進してきた!また俺は避ける。


試しにマグロミサイルを投げてみよう。



「おりゃっ!」


ガツーーーーーン


「ん?このマグロ硬っ!僕の装甲を食らっても変形しないなんて」


やはり弾き飛ばされたか!では俺の希望は消えたのだろうか?


いや、あのボールならやれるかもしれない。


しかしマグロミサイルは奴らの近くだ。これは誘き寄せて取るしかない。


「ほら!こっちだぞ!」


「おやおや、決意がついたの。それはどうも!」


奴の大きな口が襲いかかる!


ふう、なんとか避けれたが、かすってしまった。かするだけで出血するほどとは……。


「逃すと思った?」


ん⁉︎後ろに向かって風が………。


⁉︎………吸い込みだ!!!!!!


もう体力が残っていないのに!


そうだ!マグロミサイル!マグロミサイルさえあれば!


奴の口の中に放り込んで、囮として使えるかもしれないというのに!


走れ!走るんだ!!!!!!俺!


あともう少しで届く!マグロミサイルが!


「よし!」


その場にいた球体をマグロミサイルで殴る!


よし、これでいける!


「おりゃっ!!!!!!!!!!!!」


奴の口にマグロミサイルが入る。



「ん?………」


今だ!今のうちに!逃げろ!


「ん⁉︎⁉︎⁉︎………」


しかし、逃げるといっても、どこへ逃げれば良いんだ?


地上から離れているというのに。


「ん⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎……美味しい!」


「え?」


思わず声が出てしまった。鉄球は嬉しそうに飛び跳ねている。


「お、美味しい!こんなに美味しいもの食べたのは久しぶりだ!ああ、なんて幸せなんだ…………。幸せのまま消えれるとは、夢にも思わなかった。ありがとう」


奴の体が崩壊していき、やがてちりとなった。

あの白い球体も消えた。


街を見てみると、カバやフライパンが塵になっていく。


終わったのだろうか…………?


スパァァァァァァン


おや、元いた場所に戻ってきたぞ………?


なんだったんだ、あの鉄球は……。


まあ、だからといって油断できない。しかもマグロミサイルは失ってしまったし。


とにかく、先を急ごう!




















































































































これで終わりかと思うかどうかは、あなた次第です。

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