KAC20235 作家は経験したことしか書けないって言うからファンタジー小説書くため異世界に行くことにした

無月兄

第1話

 作家は経験したことしか書けない。少し前に、Twitterでこんなタグが広まった。


 それは、俺にとって衝撃だった。

 俺の好きな、ドラゴンや魔王と戦ったりその過程でハーレムを築いたりする異世界ファンタジーラノベの作者は、みんな実際に異世界にいっていたのか。


 実は俺自身、そんなファンタジーを書きたいと思い、カクヨムに投稿を続けている。だが全くの鳴かず飛ばず。

 いったい何がいけないのかと思ったが、そうか経験か。確かに俺は、異世界になんて行ったことない。これじゃ、実際に異世界に行って戦ってきた人たちと比べて、どうしても描写やストーリーに差が出るだろう。納得だ。


 なら、俺も異世界に行こう。そうすれば、憧れの作家さんたちのような素晴らしい異世界ファンタジーが書けるはず。


 しかし、事はそう単純じゃない。何しろ異世界は、道を歩けばゴブリンやスライムやオークといったモンスターがいるんだ。都合よく異世界に行った途端チート能力を授かればいいが、そうでなければ俺なんてすぐに死んでしまう。


 異世界には行きたい。けど死ぬのはごめんだ。

 悩んだあげく、俺は決意した。


 そうだ、体を鍛えよう。鍛えてきたえて鍛えまくれば、向こうでモンスターと遭遇しても何とかできるに違いない。


 その日から、俺の日々は一転した。

 朝起きるとまずは10キロのランニング。それが終われば腕立て腹筋。さらに、趣味で集めたコスプレグッズの剣を使っての素振り。食事はタンパク質多めで、プロテインも摂取。

 まるでアスリートのような生活だが、これも異世界で生き抜くため。


 それから、一年がすぎた。

 その頃には、人に貧弱な坊やとバカにされていた俺の体は筋骨隆々になり、見事なマッチョへと変貌していた。

 まさかここまで鍛えられるとは、自分でもびっくりだ。昨今、物語の主人公はなぜか強くても線が細いやつが多いが、見るからにムキムキなのもいいじゃないか。なんて、自らの体を見て自画自賛する。


 さあ、これでいつ異世界に行っても大丈夫。

 しかしそこで、俺はあることに気づいた。


 そもそも異世界ってどうやって行くんだ?


 完

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