800年後の鳥獣戯画 🐒
上月くるを
800年後の鳥獣戯画 🐒
ときは西暦2823年のこと。
いまからちょうど800年後。
🌐
自転しつづける地球の小さな島国の某博物館で、珍しい絵巻物が発見されました。
穏やかな暮らしを営んでいる人たちには描かれている物語の意味が分かりません。
サル、シカ、トリ、イノシシ、キツネ、フクロウ、イタチ、ネズミ、ネコ、ウマ、ウシ、タカ、イヌ、ニワトリ、ヒヨコ……それに、聖獣・キリン、龍、一角獣など。
🐵 🐔 🦊 🦉 🐀 🐈⬛ 🐎 🐄 🦅 🐕 🐓 🐤 🐲 🦕 🐊
みんな目を吊り上げ相手を罵り、つかみかかり、蹴とばし、殺戮し合っています。
そのうえ火を噴いて空中を飛び、建物を破壊し、生物を抹殺する恐ろしい武器も。
――いったい、これは、なんなんだ?!((((oノ´3`)ノ
驚いたのも無理はありません、この時代の人びとは笑顔で労わり合い、思い合い、助け合っていたからで、その大切な命を傷つけ合うとはなんと悲しい絵柄でしょう。
よく見ると地面には無残に蹴散らされ、ちぎれ、萎れた植物のすがたもあります。
ただそこに咲いていただけの花や、ただそこに生えていただけの樹木や草や……。
🌺
「ねえ、これってもしかしたら社会科で学んだ地球戦国時代のパロディじゃない?」「だろうね、800年前の人類って、こんなに野蛮で知性も品性もなかったんだね」
郷土学習の課外授業で引率されて来た中学生の女子と男子が小声で話しています。
巧みな絵筆に誘導されたふたりの視線は自ずから同じ描写に吸い寄せられて……。
目つきの鋭いタカ、太った身体を黒服で包んだフクロウ、南瓜そっくりのイタチ。
どうやらこの三匹がボスらしく、うすら笑いを浮かべて、ふんぞり返っています。
🔸🔹🔸🔹
が、その背後に忍び寄っているのは、聖獣・キリン、龍、一角獣などの珍獣たち。
物語の展開からして、三匹の悪鬼を一気に退治してハッピーエンドに至るもよう。
「見るに見かねた宇宙からの遣いが、強欲&嫉妬の権化をやっつけてくれたんだね」
「いま、ぼくたちがこうして平和に暮らしていられるのは天空の采配のおかげだね」
まさに第三次世界大戦が勃発しようというとき、間一髪で地球は救われたのです。
愚かしい自滅を看過しなかったのは、太陽 🌞と月 🌖と星🌟だったというお話。
800年後の鳥獣戯画 🐒 上月くるを @kurutan
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