探索2.ゴーストタウンへの誘い

午前6:30

「ふぁ〜あ……おはよう。」

自分一人の寝室で、オレはそう呟いた。

(霊子さんは……まだ寝てるな。)

左手の薬指につけてる指輪を耳元に近づけると寝息が聞こえる。

霊だって元は人間だ。

だから、睡眠だってとる。

(よし、じゃあ飯の支度でもすっか。)

そう思い、台所まで向かう。

するとそこには、一人飯の用意をしているお狐様がいた。

(ああ……そっか、昨日からこいつ等と暮らすことになったんだ。名前は確か………)

オレはぼんやりと昨日の記憶を思い出す。

(あぁ、三雲……だ。)

その名前を思い出したオレは、三雲の横に立つ。

「手伝うぞ?」

オレがそう言うと、三雲は驚いた様子でオレの方を見る。

「わぁ!?ってびっくりした……お手伝いなら不要です。昨晩、ご馳走になりましたから。」

三雲はそう言って料理を続ける。

「まあそう言うなって。元々家の家事はオレ一人でしてたんだ。だから手伝えることは何でもするぜ?今は共同生活中なんだからさ。」

オレがそう言うと、今度はものすごい剣幕でオレをにらみつける。

「結構です。元々わたくしは貴方のことを気に入っていませんので。」

そう言うと、オレは台所から押し出された。

「はあ〜、困ったなぁこりゃ……」

オレはそう呟き、リビングでニュースを見ることにした。

ニュースでは、先日起こった"連続斬殺事件"のことが報道されている。

なんでも、結構な被害者を出したんだとか。

(そういう事件のを怨念"が、怪異になったりするんだよなぁ……)

オレが頭を抱えていると、背後から車輪の駆動音が聞こえた。

正雄だ。

「やあ、晴好さん。どうしたの?頭抱えて?」

正雄がオレにそう質問してくる。

「ああ、ちょっとニュースを見ててな。全く、超能力者が群雄割拠し始めてから怪異も増えちまったもんさ。幸い、現代人はそういうのをあまり信じねぇから見えてねぇみたいだけどな。」

オレはそう言ってスティック状のお菓子をポッケから取り出す。

「お前も食うか?パッキー。」

オレがそう言うと、正雄は目を輝かせながらうんと頷いて、パッキーに手を伸ばした。

1時間後

三雲から飯の用意が出来たと言われたオレ達は飯を食べることにした。

丁度このくらいの時間に霊子さんが起きる。

リビングのテーブルには四人分のお皿が用意されていて、皿の中には目玉焼きとフレンチトースト、そしてサラダが盛り付けられていた。

ふと、オレはこう思った。

(いつもの朝食だ……)

と。

正雄の方に目をやると、いつもと違う食事が出てきたような反応をしている。

「三雲、台所のノート見てつくったな?」

オレが三雲に尋ねると、三雲は目を泳がせて

「なんのことやらわかりませんね……台所にそんなモノありましたかしら……?」

と、白々しく言った。

「まあ、いい。じゃ、いただきます。」

オレがそう言うのにつられ、皆でいただきますと言った。

そして食事をする。

いつも食べている味だ。

「うん、美味しいよ三雲。ありがとう!」

正雄は三雲の方を見つめてそう言った。

「あ、ハイ!わたくしめは貴方様に喜んでもらうためでしたら何でもやります。例えば他人の家で見つけたの珍しいレシピを盗んだり……」

その言葉を聞いて、オレはこう言った。

「アレはなくなったおふくろが自分がいなくても平気なように作ってくれたもんなんだ。丁重に扱ってくれ。」

その言葉は、三雲の耳には入らなかったらしい。

三雲はあいも変わらず正雄といちゃついてる。

(はぁ〜……これから溜息が増えそうだな。) 

オレはそう思いながらも一口、また一口と飯を口に運んでいった。

30分後

オレの携帯に着信が入る。

相手はオレ達の上司である、蘆屋優雅アシヤユウガからだ。

その着信に出ると優雅は慌てた様子でオレにこう言ってきた。

『晴好!今どこにいる!?』

その言葉に、オレは冷静に返した。

「家。それがどうした?」

オレがそう言うと、優雅は慌てた態度から、引き締まった業務連絡をするときの声色に変わった。

『そうか、ならよし。これより新たなる任務を与える。任務の内容は"調査"だ。現在各地で発見されてる"怪異多発現象"のせいで、とうとう戦闘員からも人材を割くほかなくなった。』

電話越しにガチャリと、扉の開く音が聞こえた。

『………すまない、詳しくはまた後で連絡する。』

その言葉を最後に通話が途切れた。

最後、後で連絡すると言う言葉の直前、少しだけ間があったのが気になるが、そんなことはどうでもいい。

とりあえずオレは、正雄達にこのことを報告しようと思い、全員をリビングに招集した。

一方その頃

怪異対策組織 裏(事務室)

「ふむ、珍しいではないか?"そちら"からこっちの方へと来るなんて。」

優雅は、冷静に扉の方へと振り向く。

そこには、怪しい虚無僧の格好をした男がいた。

「そろそろ、コチラも君達に全面戦争を仕掛けようと思ってね?招待状を届けに来たのだんよ。」

独特な喋り方で虚無僧は優雅に告げる。

「良かろう。その招待状は受け取ってやろう。コチラとしても"都合"がいい。」

そう言って優雅は右手をピストル状にし、虚無僧に向ける。

「なんの真似だんよ?」

優雅は虚無僧の言葉にこう返す。

「キサマ、式神だろう?なら、殺っても構わんだろう。」

そう言うと、人差し指の先端に青い閃光が溜まる。

「おやおや、バレちゃったんだんよ。でも、逃げ…」

虚無僧が逃げるよりも先に、閃光が放たれる方が先立った。

「ぐぼぁ!」

虚無僧は情けない声を漏らし、体が崩壊する。

そしてその場に残ったのは、人をかたどった札と、招待状だ。

「フム……やはり、"五夢家"の連中は頭が可笑しいな。廃墟とかした街に"霊を解き放つ"とは……」

優雅はそう呟くと、事務室の椅子に座り、コーヒーを一杯口に運ぶ。

「まあ、既にこちらも状況は把握済み。わざわざコレを送るということは、きっと、奴らも相当な準備をした……ということだろう。だが、運が悪かったな。私が此度派遣するのは、裏の"全ての支部で最強の男"と、"才能に恵まれた若者"だ。キサマ等には太刀打ちできまい。」

優雅はそう呟くと、また電話をとる。

「もしもし、晴好か?先程の続きだ。今から送る住所のところに行って、そこにいる怪異について探ってくれ。」

優雅はそう言い終え、スマホの通話を切る。

そして住所を送り、事務室を出る。

「さて、私は別件の仕事をせねばならない。本来晴好にやらせる予定だった仕事をな……」

事務室の扉を出る直前、そう言い残して。

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