第4話:イゾルデ・フォン・レインフォールシュト会長との会話

俺の名前はアデワラー・フォン・バロンデムだ。


父上はザガッス・フォン・バロンデムといって、俺達の一家はバロンデム子爵家の貴族の出だということ。現在、我がバロンデム家が主に手掛けている専業は傭兵会社と【魔戦兵器(マーギッシュ=ベーヴァフヌング)】の開発及び生産をする会社なのである。


なので、特定した人口を統治できるような領地こそ与えられていないものの、それなりに高い給与を毎年で皇帝からお受け取れるようになったり、この帝都にだけそれなりに面識の広い不動産を一世代の曽祖父の頃から遥か昔に授けられたり、ここで豪華な屋敷を立ててもらったりしてここを我々バロンデム一家が我が家にした長い歴史がある。


俺達の家系は3世代にも亘ってすっかりとこの帝都、エグベルトライ―ヒの住民となったが、元々のルーツは褐色と黒色人種が多く住んでいる南の大陸ヌルハドールのグデム自治領だった。


一世代の頃、数多くの【魔核獣(ルナス)】を南の大陸のあっちこっちで数万匹にも及ぶ程葬り去ったガレツというとんでもなくデタラメすぎた凄腕の傭兵がいた。ある日、彼は自治領にとある広告を目にした。

その広告の内容とは、「北の大陸、マークドゥーヴィアへ有志来たれ!【超大型魔核獣(ギガルナス)】の討伐を求む」。


それを読んで決断を下したガレツなのだった。持ち前の剛力で経験豊富な戦闘力、そしてグデム系の中でも前代未聞で類稀なる最大の【魔気流量】の保持者だった。


マークドゥーヴィアのウェルトハイム地方で無事に【超大型魔核獣(ギガルナス)】を討伐できたガレツはソールヴェスト=グローウチェスター帝国の英雄として奉られ、当時は外見があまりかけ離れてる所為でまだグデム系を見慣れてない北の大陸の住民に差別的対象として酷く扱われていた時期であってもその討伐後を経て、すっかりと普通のようにウェルとハイム地方の住民に受け入れられるようになった。つまり、帝都領のすぐ隣の地方だ。


そして、爵位を授与されたと同時に、バロンデムという新しい家名を命名してもらった、皇帝から。


話を現在へと戻すと、実は俺が物心がつく前の頃....つまり、産まれてからまだ半年間しか経ってない時期に母上...つまり、父上の妻であるエンゾクフレー、がとある最悪な日、父上の目の前でどういう訳か、いきなり半透明な姿となってしまいその後すくに跡形もなく消え去ってしまったと父上から聞かされた話。


当時、その事件が起きたのは父上の仕事場である帝都のウェルヌシュトーフェン帝城にある彼の公務室だそうだ。明らかに異様過ぎる光景に唖然としていた父上だったが、直ぐに我に返って母上がどこに消えちゃったのか慌てて消えた一か所へと駆け込んでいった父上だったらしいが、その後は母上を助けるために色んな魔術を試してみても無駄だったと聞いた。


なので、俺は母親なしで父上が一人で俺とキャロラインを育ててくれたということだ。その息子である俺が、今は不甲斐なく仲間と呼べる友人達と共に、生徒会室へと連行されてきた。


「それで、なぜ君達は許可もなく街中で【転移魔術(テレトラスポールト)】を違法使用したのか、まずはその理由を聞いておこうね。返答によっては君達を【違法魔術使用防止部署(ドールドルイーズ)】へと引き渡すこともあるので、くれぐれも学園の学生として恥のないように....」


整理整頓された四角い部屋にはピカピカと清く磨かれた真っ白い天井があり、そこら中にいくつかの魔光灯による白い灯りが部屋中を照らしている。床には豪華な赤色の絨毯があり、左右には大きな本棚があり、天井高くまで積み上げられているずっしりとした本の陳列がある。


右側には来賓者をもてなしたり、話し合うするためのソファがある。

でもそこには座らせてもらえず、反省を促すようにと俺達4人を部屋の中心に立たせている向こうのデスクで優雅に腰を下ろしている銀髪と緑色の瞳をしている、【帝立学園ソールヴェスターズ】の生徒会長、イゾルデ・フォン・レインフォールシュトなのだ。


「........逆にこちらから聞きたいんだけど、なぜ俺達が【転移魔術(テレトラスポールト)】で以って、学園の敷地内へと転移してくる事を事前に予想できたみたいなことを言っていたんですか、レインフォールシュト会長?」

こればかりは疑問だ。確かに【違法魔術使用防止部署(ドールドルイーズ)】が設置してあるアラームに引っかからないために最初から俺は【魔気流隠蔽(シーグスヴェベールヘン)】で魔気流の放出を隠したはずだったが、さっきのアーグズミョ―ラさんに俺達を待ち伏せさせたことに関する理由は如何なるものか......?


「答えは簡単なのよ。君、....バロンデム君が【魔気流隠蔽(シーグスヴェベールヘン)】を使ったことで【魔気流探知機(シーグススペルーン)】のアラームが絶対に鳴らないだろうと踏んだから私たち生徒会だけで捕まえてみせるよと決めたからよ」

冷静沈着な面持ちでありながらも、どこかお茶目っ気な雰囲気でそう説明しながら白い人差し指を上へと立ててみせた様子だ。


「ーー!?」

でも、たとえそうだとしてもー


「でも、なぜレインフォールシュトお嬢様はご主人様に【魔気流隠蔽(シーグスヴェベールヘン)】がお使いできるとご存じなんですか?そもそも、アーグズミョ―ラお嬢様を裏庭まで見張らせていたような事をしたということは、つまり最初の最初からご主人様が遅刻を回避するために【テレトラスポールト】をお使いになるとご予感したということになりますよ?でも、これは高度な魔術のはずです。要するに、ご主人様の実力をお嬢様がはー」

「んなもん、最初から筒抜けだぜ、うちの会長さんは~。っていうか、質問が多すぎるぜぇ、メイドさんよぉー」


キャロラインの問いに反応したのは会長の隣に陣取ったアーグズミョ―ラさんだ。

どういうわけか、得意顔な表情になりながらもなぜか声のトーンに苛立ちが少しだけ混じってるような気がしないでもないけど?というか、さっきの一戦を交わしたこと必死だったので考える暇もなかったけど、彼女が【魔気流指突(ウネールヴェード)】を使った時魔気流探知のアラームが鳴らなかったのはどういうことなの?もしかしたら、アーグズミョ―ラさんも【魔気流隠蔽(シーグスヴェベールヘン)】を使用できるからなのか?


「僕も気になるね。なぜ会長さんにそんなことが分かりますか?」

アンドルーも会長に対してそう聞いている。

「やっぱり、会長んところのお姉さんが10年前の【聖大会(ハイーリグス=トールニエール)】のチャンピオンである「氷結の聖女」だからアデワラー先輩の家系について何か聞かされましたかなー?だとしたら、あたしにも聞かせてほしいなぁ~~。アデワラー先輩は滅多に自分のことを必要以上に話してくれないからね~」


今度は意気揚々と張り切って会長に物を尋ねる姿勢となったアリシア。まったく....またしてそういうことを...... 言っとくけど、俺とキャロラインの過去についてとか、俺が習得したすべての魔術の種類とか、俺が何の訓練を経て今の【魔気流量】を保持できるようになったか、全部をお前に話す気はないからな!父上との約束もあるし話したくても話せないんだ。


「うーん....。まあ、...君達に話してもいいかぁ。実は......」

神妙な表情になり始めてる会長がこれから話すことになるのは、これから帝国....いや、世界をも変えるきっかけとなることを、当時の俺達の誰もが想像することが出来なかったのであろう..........


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聖城の元へ集う赤旗団の貴族達 明武士 @akiratake2

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