第3話 ヒロイン救出

「はい、開始」


1時間半で50問のテストをどれだけ解けるか。


清華は部屋で黙々とペンを走らせる。

俺は邪魔にならない様下に行く。


「姉さん、今頃清華は必死の表情だよ」

「それはよかった。どうだ? 清華はテスト、いけそうか?」

「んー、このまましっかり覚えれば……問題ないんだけどね」

「清華次第か」

「うん」


姉さんと会話しながらタイマー見る。


さてさて、結果はどうなるかな?


「じゃ、俺はそろそろ行くよ」

「ああ、清華をよろしく頼む」

「うん」


清華の部屋に戻る。


そして見えたのは……疲れ果てた清華。


「お疲れさん。姉さんが作ったクッキーとお茶だ」

「あ、ありがとうございます」


俺は清華の解いた問題を見る。


うーーーーーーーん?


…………酷い!


「少し待っていてくれ」

「はい……」


こりゃ姉さんに見せないといけないレベルだ。


50問中……見た感じ、解けた問題は半分……かそれ以下だ。


「ね、姉さん……清華の解いた問題を見てくれない?」

「ん? ……おおっと……これは……酷いね」

「だね……」


今頃上でムシャムシャとクッキーを食べてあるであろう清華、だがお前にそんな暇はない。


「ちょっと厳しく教えてくるね」

「ああ……」


そして、2階から絶叫。

知るかそんなもの、もっと頭に叩き込め。


……俺は今、困っていた。


「……えと」

「……だ、大丈夫なの?」

「……ちょっと、強く殴りすぎたかも」


人助け。男を殴り飛ばした……そしてその男は、壁に埋まった。


「とりあえず……ありがとう」

「いや、いいけど……これ、どうしようか?」


壁を壊したのも問題だ。それと、この男も心配だ。


「まあ……放置でいい……と思うけど……」

「そう? ……いや、引っこ抜くよ」


男の腕を掴み壁から出す。

後はこの男を捨てておこう。

空に放り投げられた男は、顔面からゴミ箱にシュートされた。


うーん……なんかごめんね?


「す、凄い力だね……」

「まあ……火事場の馬鹿力ってやつ」


苦笑いでなんとかする。


……それから、俺はその助けた女子とよく会話する様になった。


そして、俺は思い出した。この子が、ヒロインであることを。


「……あ、あ、あ」

「どうしたの?」

「……ちょ、ちょっと待ってて、トイレ行ってくる」

「わかった」


天野あまのしずく、水魔法の使い手であるヒロインだ。


お、俺とした事が……シナリオは守ろう! って決意したのに……。まあんな事無理だと思ってたけど。


「……ただ、出来るだけシナリオは守らなくちゃな」


ここからどうやって主人公に移住させるかだ。

ほ、方法が思いつかねえ……!?


「とりあえず戻ろう」


と言って教室の扉を開ける。


「早かったね」

「トイレしたいって気持ちは俺の勘違いだったっぽい」

「そんな勘違いあるんだ」

「まあな」


そういえば……もう魔法に目覚めてるのかな?


ゲームではいつ魔法に目覚めたのかがわからなかった。

1番最初の仲間が雫だ。多分……もう目覚めてるのかな?


とりあえず、雫の紹介をしよう。


水魔法の使い手で、クラスの人気者ではある。

性格は……まあ……良いとも言えなく、悪いとも言えない。簡単に言えば猫を被ってる。

だが、今は何故か結構素だ。


「ねえ、君は今日暇?」

「暇……まあ5時までなら時間はあるな」

「ならちょっとさ、行きたい店あるから着いてきてくれない?」


そんな誘い、勿論俺は嫌そうな顔で返す。


「そんな顔しないでよ。嬉しいでしょ? 一緒に行けて?」

「いいや? 一ミリも、一切も、ほんっっとうに嬉しくない」

「ええ……変な人だね」


お前の方が変だよ。と声を大にして叫びたいがクラスが敵になるのでやめておく。


俺達はクラスの隅っこ、小声で会話してい

る。


クラスの視線が痛い、主に男子の視線が。

まあ仕方ない。だってなんの取り柄もない男が急にクラスの大人気である美少女と話しているんだからな。


「これが私の素なの」

「言うのが遅いな」


数年前から知ってますよ、んな事。

どっちかと言うと、この素の方が俺は好きだけどな。


「大丈夫! ただのレストラン行くだけだよ!」

「奢れとか言うのか?」

「あわよくばなぁ〜って」


本当の目的を出しやがったな。


「奢っても良いけど、奢りません」

「奢っても良いなら奢ってよぉ〜」

「てか今日会ったばかりの人間に奢れって、結構無理な事言ってる事を理解しろよ」

「まあそれはそうだけどさぁ」


残念そうな顔をしている。

奢った所で俺の財布はあまりダメージを受けないだろう。

でも、でもだ。今日会ったばかりな奴に奢れってのは気が乗らないな。


「ま、奢らなくていいからさ。とりあえず着いてきてよ」

「……はぁ、わかったよ」

「じゃ、放課後、門の前で待ってるよ〜」

「はいはい」


奴が先に戻ると、いつも通り猫を被り女子と男子と会話する。

切り替えの早い奴だな。


「才華に友達が出来るとはなぁ……」

「アレは友達じゃないよ」

「む? そうなのか?」

「……まぁ、知り合い……みたいなものだよ」


姉が主人公のヒロインで妹も主人公のヒロイン……そして知り合いも主人公のヒロイン……やってらんねえ!?

もうシナリオ保護とか無理じゃないか。


「ま、仲良くする事だ」

「……はーい」

「嫌そうだな。クラスの人気者だっただろう? 成績上位、優しく、可愛い子だ。仲良くしないと損だろう?」


いや、まあそうだけど! それは偽りの性格であり、本当の性格は人を弄ぶのが好きな人間だ。


「毎回思うけど、姉さんは人と話さないのか?」

「話はするが……面倒でな、対応はほとんど清華に任せてある」


そう言われて清華の方を見ると12…‥14人くらいの人の対応をしていた。

そんな清華は俺に気づくと口パクで

 「た す け て く だ さ い」

と言ってきた。だから俺も口パクで返すのが礼儀だろう。

       「無・理☆」

…………とな。

























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主人公でもなく黒幕でもないモブに転生、でもモブの前世は勇者と魔王の息子らしい。 紅葉司 @supiayut

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