第2話 魔法

ふと、思った。


俺魔法使ったことねえじゃん。


と。


だから魔法を使いたい……けど何処で使おうか。


「才華? 何処行くの?」

「休日だから少し外に出ようとね」

「そう、気をつけてね」

「うん」


財布とスマホを持ち家を出る。

何か買いながら、人気の少ない場所を探そうかな。


「……黒幕……そういや俺、黒幕の位置わかるじゃん」


わかった所でどうしようもないか。

主人公の仲間になったとして、魔王の力がバレれば何か面倒な事が起きるのは間違いない。


結局、隠して生きるしかないってことか。


話は変わるが、魔法を使うための魔力ってのは、結構応用が効く。

魔法を使うのは勿論として、位置の察知や追跡、身体強化や防御にも使える。


人間誰しも、体に魔力を保有している。


魔力と人がぶつかると、拒絶反応を起こす。

例えるなら、主人公の魔力は、他の誰でもない主人公の物だ。

そんな主人公の魔力がヒロインに触れると、反応を起こす……ただ、反応を起こすってだけだ。

その反応を使う事で察知が出来る。


例えるなら、俺がクラス内に魔力を巡らせるとしよう。

魔力が主である俺ではなく、他の人間に触れる。そして、反応を起こす。だから大体の位置は察知する事が出来る。


そういう使い道もある。


俺は勇者と魔王の力があるせいか、途轍もなく魔力量が多い。

……使い道があまりないが。


とまぁ、そんな俺は今、人気のない森に来ていた。


魔力を操作し、右手の上白い球体を召喚させる。これは勇者の力だ。

そして、同じ方法で左手に紫の球を召喚させた。


「ぬーん!」


二つの球を合わせる……。


「……へっ?」


大きな爆発が起きる。


……まあ、魔法と魔法がぶつかれば……そうなるよね。


……目覚めるとベットの上。あれ? あそこで気絶してると思ったんだけどな。


「才華」

「うん? ああ、姉さん」

「ビックリしたじゃないか。爆発音が聞こえて、そこに行ったら才華が寝てるんだ」

「ああ……」


なるほど、姉さんが助けてくれたのか。

いいタイミングで姉さんは来るな。


「で、なんであんな事になってたんだ? 地形も抉れていた、傷はあったが、才華も結構なダメージを受けている」

「えーとね……」


これ、どう言い訳すればいいんだ?


「……えと、なんか急に爆発してから……」

「急に爆発……?」


そんな苦し紛れの言い訳。勿論疑いの目を向けられる。


「……ま、無事ならそれでいいかな」


なんとかなった……のか?


あの魔法の爆発を見るに、威力はあるだろう。


「それと、清華が才華を探していたぞ」

「え?……あっ」


勉強教えないといけないんだった!


「姉さん、清華は何処?」

「一階だ」

「了解、少し行ってくる」

「ああ」


一階に行き、清華に声を掛ける。

そして、清華の部屋に連れてかれる。


「……わかりません!」

「そんなキッパリ言うな」


アドバイスは言ってる……が、わからない様だ。


「逆に、なんでわかるんですか!?」

「……お前って、他は完璧なのに勉強は出来ないよな」


うん、他は完璧なんだ。


この家で1番早く起き、皆んなの飯を作って、弁当も作る。家事は全部清華がしていた。

容姿も、性格も完璧なのに……勉強ときたらダメダメだ。


「はぁ……」

「才華お兄さん、ここはどうするんですか?」

「ええと……」


そしてアドバイスを送る。


……時は流れ2時間。俺が作った問題を10問出すことにする。


「そうだな……ま、7問正解なら良しとしよう」

「な、7問ですか……6問にしません?」

「8問にするか?」

「なっ、7問でいいです……」


清華は嫌々言いながらペンを走らせる。

苦虫を噛み潰したかの様な表情で一問一問丁寧な文字で解いて行く。


そして、そして……1時間ほどでやっと終わった。


「ひぃ、もう疲れました」

「おめでとさん。ピッタリ7問正解だ。あと3問は惜しくも不正解だ」

「や、やりました!」

「ま、忘れずに毎日頑張る様にな」

「はい!」


……4時間近く立ってたから足が痛い。


寝るまで後3時間か。飯……と風呂入ったら勉強でもするか。


…………いつも通り屋上で、姉さんと清華と昼飯を食べる。


「そろそろテストですね……」


険しい顔で清華が呟く。

そんな嫌か? まあテスト好きってのは少ないだろう。


「才華に教えてもらっただろう?」

「……あの後6問正解しか出来なくなって」

「おおっと? また教えないとな」

「……お願いします」


最低でも、正解率7割は維持してほしい。

兄として心配だ。……ちなみに、血は繋がってない。

俺は親父から拾われた。小さい時にな。


小さい頃の記憶は曖昧だ。でも、思い出したくはない。


「才華お兄さんって最近変になりましたよね……あっ、良い意味でですよ?」

「そうか?」

「はい。人助けをする様になって、勉強も教えてくれる様になりました。前まではそんな余裕もなかったのにです」


人助けの事バレてたんだな……多分、助けた人から感謝されている所を見られたからか?


「少し余裕が出来たんだよ」

「なんであの問題をずっと解けるんですか……私1時間に一回はしないと無理ですよ……」

「あれくらい、解けないと姉さんに置いてかれるからな」


姉さんの成績は上位だ。その一個下が俺……といった感じだ。


ってか1時間に一回しないとダメって……。


「清華は物の位置をちゃんと覚えているだろう? それなのに勉強は覚えられないのか?」

「はい……なんか忘れてしまって」

「ふむ……よし、とりあえず今週の家事は私がしよう。清華は勉強に時間を費やしなさい」

「ええ!?」


うん、まあ姉さんなら家事も出来る、成績上位も確定してる様なもんだし問題ないな。


「んじゃ、俺は清華に教えるって事でいいの?」

「ああ、才華はそれで問題はないか?」

「うん、大丈夫」


やるべき事は大体決まったな。


…………。


「やっと七問正解です!」

「おめでとう。ある程度出来る様になったら50問の問題を作ってやろう」

「ひゃっ……ご、50問……?」

「50問程度普通だろ」


この世の終わりを見ている様な表情をする清華。

一つばかり教えるのもよくないし、何個か教科を入れて問題を作るか。


「ま、楽しみにしておけばいいよ」

「怖いのですが……楽しさなんて一切ないのですが……」

「楽しみにしておきなさい」

「はい……」


そこから俺はアドバイスを送る。


……5時間ほどやって休憩となった。


「つ、疲れました……」

「休憩して……2時間ほどやったら今日は終了しようか」

「な、長いですね……」

「お前の場合これくらいやらないとダメだろ。赤点になるぞ」

「それもそうですけど……」


嫌々言いながら休憩は終わり、ペンを走らせる。


苦手な事も一応最後までやるのが清華だ。

過程はダメでも、終わり良ければ全て良し、という言葉があるだろう。


過程は嫌々でも、結果さえ、赤点回避、成績も上位に行ければ良い方だ。


清華は遅刻も、提出も出来なかった……なんて事はない。風邪にもなった事はあまりない。だから後は頭だ。


「ここ間違ってる」

「え?……これでいいですか?」

「ああ。ん? ここも間違ってる」

「ええ……と。出来ました」

「おう。……それと、大きなミスだ」


ピシッと指す。


ただの誤字だ。だが本番じゃこの誤字がいけない。


「うん、ま、今日はこれくらいにしておこう。明日は50問出すからな」

「は、はい」

「それじゃ、おやすみ」

「おやすみなさい」




























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