第2話 解答編
「ダブルフェイスの意味ですね」
「初めて聞く言葉だったので、普通のルースと何が異なるのか知りたい」
ブラックオパールのルースケースに書かれていたダブルフェイス。見た目は普通のブラックオパールにみえる。芽衣子さんの話では珍しいルースらしい。
「実際に見てもらったほうが早いと思います。ルースケースから取り出します」
芽衣子さんは該当するルースケースをガラスケースの上においた。トレイをもってきて、ていねいにルースケースを開けて、手でルースを取り出した。
「ピンセットは使わないの?」
ルースはピンセットで見せるイメージもあった。
「ルースが飛んでしまう恐れがありますので、手のほうが安全です。見終わったらルースをきれいにふくので問題ありません」
「たしかに掴み損ねて飛んで、破損したら怖いよね」
私の前にトレイを移動してくれた。ルースケース内にあったのと同じ、きれいな青色と緑色がみえる。
「ルースを裏返してください」
芽衣子さんの言葉に従って、ルースをゆっくりと裏返した。想定していた灰色や黒色の裏側とは異なった。
「裏側もきれいな青色が見える。さきほどの面と異なって小さな星空の模様ね」
「ダブルフェイスとは、両面にかがやきがみえるルースとなります」
「すごくて面白いルースね。表と裏が異なる表情で、眺めていて楽しい」
トレイの上でルースを回転させた。
「透明なフィルムで挟む形のルースケースもあります。ルースケースから出さずに両面を見ることができるので、そのようにして眺める人もいます」
毎回ルースケースから取り出さないのは、たしかに楽で安全そう。
「珍しいルースだから値段も高いの?」
同じようなルースに比べて値段が高いのを思い出した。
「2つの面でかがやきを楽しめるので、その分は値段が高くなっています。ただレアといわれるほど希少性はないので、好みで選んでもらえれば平気です」
「珍しいルースだけれど、やっぱり自分の好みが大事なのね。でもダブルフェイスは2つのルースに分けてもよさそう」
素朴な疑問だった。ダブルフェイスは珍しいけれど希少性はあまりない。無理にダブルフェイスにする理由はなさそうだった。
「ルースをカットする職人さん次第だと思います」
「きっとカットしながらルースの状況を確認しているのね。両方の面でかがやきを楽しめるのなら、両面が使えるペンダントトップを作ると面白そう」
「ダブルフェイスのルースを、そのように使う人もいると思います」
「教えてくれてありがとう。ほかのルースも眺めてみるね」
ほかのルースへ視線を移した。時間を忘れてオパールを堪能した。
(了)
宝石オパールは語る_7 ~2つの顔~ 色石ひかる @play_of_color
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