宝石オパールは語る_7 ~2つの顔~

色石ひかる

第1話 問題編

 私は倉木くらき彩香あやか、20歳の女性。ルースコレクター初心者の社会人。ルースは宝石の石単体で裸石ともよばれている。中でもオパールが大好きだった。


 宝石や鉱物を販売するミネラルショーにきた。最初にオーストラリア産オパール専門店へよった。店主の川畑かわばた芽衣子めいこさんを見かけた。20代後半のお姉さんだった。


「彩香ちゃん、今回も来てくれてうれしいです。思う存分ルースをみてください」

「すてきなルースとの出会いが楽しみよ。気になるところがあれば質問するね」

 展示されている手前のルースから眺めた。今日もオパールを堪能できる。


 最初にボルダーオパールを眺めた。大きさや形状が異なるルースがたくさん並んでいた。発色のよいルースはブラックオパールといわれても違和感がなかった。

 となりのガラスケースへ視線をむけた。ブラックオパールが並んでいる。


「初めて見るルースがあるみたい」

 芽衣子さんへ視線をむけた。

「新しいルースを入手しました。気になったルースがあれば取り出します」

「目移りしそう。決まったら声をかけるね」


 引き続き、ブラックオパールを眺めた。

 1つのルースケースに目が留まった。青色と緑色が鮮やかなルース。見る角度で色が変わった。でも興味を引いたのはラベルの言葉だった。

「ダブルフェイス?」


 小声で思わず読んでしまった。直訳すれば2つの顔。たしかに青色と緑色が角度を変えると別の顔になる。ただブラックオパールなら当たり前の変化だった。わざわざラベルに書く意味がわからない。


 見る向きを変えて眺めたけれど、今までに見たルースと大差はなかった。同じようなルースに比べて値段が高めに感じた。

「見た目もカットもほかのルースと変わらない。大きさも指輪にするとちょうどよい大きさで、珍しくないよね」


 私の声が聞こえたのか、芽衣子さんがこちらに視線をむけた。

 これ以上は考えていても分からない。すなおに聞いたほうがよさそう。

「芽衣子さん、ダブルフェイスの意味が分からない。もしかして、このルースはブラックオパールとは異なるの?」


「れっきとしたブラックオパールです。ただ珍しいルースでもあります」

 ブラックオパールの場所に、間違って置いたわけではないみたい。見た目が変わらないルースの真相を知りたくなった。


「きれいなルースよね。でもどのあたりが普通のルースと異なるのか知りたい」

 芽衣子さんの発言をまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る