バナナとりんご 🍌🍎
上月くるを
バナナとりんご 🍌🍎
自分のために使うお金は、極端なほどケチなヨウコさん。
リタイア後は蟻のようにつましい暮らしを営んでいます。
ただ、朝一番に摂るふたつの果物のお代は惜しみません。
といっても両方合わせて一食約五十円なのですが。(笑)
――こぶりなバナナ一本&小粒のりんご四分の一。🍌🍎
毎朝、起き抜けの水をコップになみなみ一杯飲んだあと、この愛らしい果物たちをいただき、そのあと、心療内科で処方してもらっている、ごく軽い抗不安剤を一服。
通うたびに「朝夕、きちんと服用していますか? 症状は落ち着いていますか? 夜、よく眠れていますか?」と訊いてくださる親切な薬剤師さんを思い出しながら。
👩🔬
健康保持のルーティンになっているので、しみじみバナナ&りんごを観察したことがなかったのですが、凍みがゆるんだ朝、感謝をこめてじっくり見つめてみました。
南の国から届くバナナ、秋の収穫時の鮮度を保って保存されていた自国産りんご、それぞれの個性をごく当たり前として、冷蔵庫の定位置で穏やかに暮らしています。
バナナがりんごに変わることはないし、りんごがバナナになることも一生(笑)。
みんなちがって、みんないい……つぶらな眸の金子みすゞさんがここにもいます。
🥝
起き抜けにつけておいたラジオから「どんな場合でも、人は当事者であるとともに第三者でもあります」「一度だけの人生、どんな生き方をしようと当人の自由です」
たぶん、ですが、マイノリティに属する生き方の選択により日常的にコツンと堅いものを感じていると推察される方の、しごく当たり前の言の葉が流れ出て来ました。
――果物の当たり前が、いまだに当たり前でないのが人間。
お利口ぶっていて、じつは相当に遅れているんだよね。
起き抜けの健康ルーティンを済ませたヨウコさんは、産地も形状も色も味も異なるバナナさん&りんごちゃんに感謝しながら、お部屋の掃除の支度にとりかかります。
バナナとりんご 🍌🍎 上月くるを @kurutan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます