笑っちゃいけないんだけど笑っちゃう恋のお話

 付き合いたてのふたりの、初々しい恋のお話です。

 あるいは、そうなるはずだった物語です。いやこれ以上ないくらい初々しくはあるんですけど、きっと当人たちの中ではもっとロマンチックになっていたはずの恋のお話。
 なんかもうたまらないやつでした。こんなの悶えちゃう……。

 初めてのキスの、でもちょっとした(でも当人にとってはものすごく大きな)失敗。
 わかるというか、「あるある」というか、似たような経験があったりしてとても甘酸っぱい気持ちになりました。

 一周回って妙に冷静というか、「どうやればいいのか」に意識が持っていかれちゃって、変な動きになっちゃう。
 どきどきしたりうっとりしたりといった方に割く脳のリソースが微塵も残ってない……容量(メモリ)の無駄遣い……♤

 主人公の内心の独白、「ただの自己中なカスだ。」「もう最低な男だと思った。」辺りのリズム感がもう大好き。こんなの笑っちゃう……!
 そんなことないよと言ってあげたいのに、つい「そこまでじゃないよ」になっちゃう。大丈夫! そこまでじゃないよ! まだカス三歩手前くらい! いけるいける全然いける!

 なんだかんだ甘いムードなとこも好きです。
 主人公自身にはいろいろ迷いがあるっぽいんですけど、傍目には(無責任な観覧者からすれば)そこも含めて甘い恋。
 甘酸っぱくてもどかしい、なのに笑えてしまう素敵なお話でした。