第3話 訓練場と食事
あの方が村人達を連れてきてから1週間が経ち、魔王城の裏の森には小さいながらも村が出来てきてた。村人達が固まって過ごせる程度の大きさの建物が建てられ、今は私の部下達も畑の開墾を手伝っている。
そしてあの方も人間達の作った村の視察に向かわれた。開墾中の畑に飛び込まれるというハプニングはあったものの一仕事終えられたあの方は魔王城へと戻ってきていた。
あの方は戻られるその足で魔王城の訓練場を見て回られていた。
おそらくだが あの方が元いた世界でもその名を轟かせていたのだろう。なんと言ってもこの魔王城で『魔王軍最強』として『四天王』の座を守り続けているのだから。
あの方に挑んだ者は等しく負け、あの方を敬愛するようになる。私はまだ挑んだ事がないが魔王軍
私が邪推するにおそらく配下たちの練度を確認する目的でしばらくここにいるだと思う。魔王軍最強のあの方の登場とあってか訓練場にはピリついた空気が流れていた。
け、牽制するような視線を飛ばしあっているようにも見えるが気のせいだろう。
部下たちも緊張からチラチラとあの方のことを見て集中できていない。
今日は雲ひとつない快晴で、あの方はゴロンと横になり目を瞑ってしまった。しかしあの方のことだ。あの状態でも魔力感知などでこちらを観察しているのだろう。現に部下たちが会話すると、たまにピクっと耳が動くのだ。
しかし、なぜだろう。部下の訓練の様子を確認しているあの方を見ていると眠くなっていく。それは部下たちも同じようで、一部で船を漕ぎ始めている奴もいる。
ま、まさか?!彼の方は我々に睡眠魔法をかけて鍛えるつもりなのではないか?!であればここで寝てしまっては失望されてしまう!
気をしっかり持たねばならんな。
あの方はこれだけの規模に大魔法をかけながらも前脚のスナップを効かせて頭を掻いている。おそらくだがあの方にとってこれだけの規模に魔法をかけるのは余裕ということなのだろう。
しかし、やはり眠気が.....。さすがあの方の魔法、あらが、えん.......。
こうして、猫のお昼寝という魔力に誘われた魔王城の訓練場にいた者たちは、猫様と共にしばらく間のひなたぼっこを堪能することになってしまったのだ。
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あの方は他の魔物と違ってあまり食事量が多くないようで、いつも魚2匹程度食べてしまったら立ち去ってしまう。あの程度の食事でも活発に動き、敵を倒されるなんて。きっと私には想像もつかないような過酷な訓練メニューの一環なのだろう。
ところが今日はなんと魚2匹に加えて特別メニューの鶏モモ肉の角煮を頬張っていらっしゃった。おそらく鶏肉を食すことで筋肉量の増加を図るお考えなのであろう。
私も見習わなければならんな。どれ、私も一つ食べてみることにしよう。
ぷるりとしたトロミのあるソースに絡まった角煮。私は早速食べようとナイフを入れる。
なんだ!?この柔らかさは!
まるで豆腐でも切っているのかと思うほどにスルリとナイフが入り込み、ナイフに押し開かれるように圧迫されたお肉からは肉の油が滲み出る。
そうして切り分けた角煮にフォークを刺して口の中へ頬張る。
ッ!?じゅわっと口の中に広がる肉汁、ほろほろと崩れていく肉に染み込んでいたソースが口内に溢れ出す。よく噛んで味わっているとお肉がゆっくりと溶けていく。
なんとこんな美味いとは!?
これは刻んで煮込まれた生姜だろうか。胃に入ると身体の芯がぽかぽかするようだ。
ふぅ。想像以上に美味かったな。
どれ、私は肉料理ばかり食べていたが彼の方のように魚料理も食べてみるか。
焼き魚だが塩のシンプルな味付けがちょうど良い。彼の方は飲まれなかったがこの豚汁というものも身体が温まる。
豚汁は具沢山だがやはり魚料理だけでは物足りない。私はいつもならご飯だけでも5杯以上は食べるのだ。
あの方がそっとこちらを向き、すぐさま近くにあったチラシを咥えてやってくると前脚でペシペシとチラシを叩く。
『肉のステーキマウンテン、30分で食べ切ればタダ』と書かれていた。
タダ?!イラストではあるものの結構なボリュームがあり、私でも食べ切れるかはわからない。
ひとまず、この肉の山を注文する前に明日以降もこの角煮を恒常としてメニューに加えるように後でシェフに言いにいかなければ。
『私は四天王の中でも最弱、でもアノの方は....。』 猫野いちば @kjokaeri
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