冷たい夜の小さな逢瀬

 バレンタインの夜、雪の降りしきる中、チョコとワンカップ酒とハンカチを手に歩く男性のお話。

 切なくて悲しいけどほんのり温かい、でもやっぱりどうしようもなく寂しい恋の物語です。

 残業で暗くなっちゃったオフィスとか、夜にしんしんと降り積もる雪とか(翌朝の雪かきが大変)。なんともうら寂しい光景が続く中で、先輩のどこか飄々とした様子がとても好きです。
 なんというか、彼女との会話でホッと人心地つく感じ。

 この読み味がとても好きで、最初に読み終えたとき「心温まるお話だー」と思ったのですけれど、でも改めて読むと「あれ? やっぱ寂しいな?」と感じちゃったりするのもすごい。
 先輩に会いに行くこと。どうあれ過去への執着には違いなく、主人公はずっと前に進めないままでいるのでは……と捉えると胸がギュッとなります。

 でも年に一度昔を振り返るくらいなら……むしろ義理堅くていいことだと思うし……。
 つい主人公にとってより良い形で解釈したくなる、寂しくともハッピーであってほしいお話でした。