劣等聖女の新生活

第62話 劣等聖女達の新生活

 ということで、なんやかんやあって私ブランノア・シュバルツの新居が完成しました!

 いぇいいぇい、ぴーす。


 いやぁ、早かったね。

 これもルクセウスさんの多大なる尽力のおかげだね。私とエフィの愛の巣のためになるはやで手配してくれたみたい。本当にありがとうございます。


 無事引っ越しも住んで、新しい従業員も雇ったので……やるでしょ、歓迎会。

 ちょうどやりたいこともあったし、みんなを集めて、テキトーにお菓子とか食べながら親睦会的な催しをしたいと思います。


「ブラン様にしてはまともでいい案だと思います」


「そうですね。ソラさんとルナさんもこれから顔を合わせることも多くなると思いますので、仲良くなりたいですね」


「でしょー」


 私達は知ってる仲だからいいけど、新しくメイドとして働いてくれることになったソラルナ姉妹は私達のことあんまり知らないしね。

 これから一緒に暮らしていくことになるから、二人のことをもっと知りたいし、私達のことも知ってもらいたい。


「肝心の双子姉妹は今どちらに?」


「この家探検してていいよーって言ったからどっかにいるでしょ。今呼びかけた。あ、こっちに向かうって」


「二人の加護ですか」


「そ。ルナちゃんの受心の加護で私が呼んだってのを読み取ってもらって、了承の返事はソラちゃんの伝心の加護で届いたよ。二人揃うといい感じだね」


 二人揃って精神感応の加護。おっと……この言い方だと加護目当てみたいに聞こえちゃうね。いい加護持ちのかわいい女の子が二人も働いてくれるなんて嬉しいねぇ。かわいいから給料上げちゃおうかな。


「むぅ……」


「ほら、お嬢様がむくれてしまってではありませんか。ブラン様、年下相手にセクハラするのはよくないと思いますよ」


「まだなんにもしてませんけど!?」


 ちょっと顔が緩むだけですぐこれだよ。私のこと性欲モンスターだと思ってるのかね。というか、その理論でいくならエフィも年下の私とあんなことしてるわけだから咎められるべきでは?


「いーえ、ブラン様は絶対セクハラします。しないわけがありません」


「リンネはメイド長になったからって二人にパワハラしちゃだめだからね」


「しませんよ!」


「どうかな~? あ、エフィは何ハラするの?」


「……なぜハラスメントをする前提なのですか?」


 私がセクハラ、リンネがパワハラするならエフィもなんかするでしょ。そんなことになったら職場の治安悪すぎて双子ちゃん辞めちゃうかもしれないけどね。


「すみません、おまたせしました」


「なのです」


「うんうん、いいねいいね二人とも。メイド服似合ってるね~。すっごくかわいいよ」


「むぅ」


 万を持して、メイド服を纏ったお二人の登場。

 やっぱりかわいくて最高なんだけど……あの、エフィさん?

 どうして私の太ももをつねるのでしょうか?


「ほら、お嬢様が拗ねちゃったじゃないですか。浮気はいけませんよ」


「今の浮気判定なの? かわいい女の子をかわいいと褒めることすら許されないの、私?」


「ブランさん、浮気、ダメ、絶対」


「エフィが一番かわいいよ~。好き~……ぐえっ」


 ふくれっ面で太ももをさすさすしてくるエフィがかわいすぎて愛が溢れちゃうね。

 エフィに抱き着いて頬ずりの一つや二つ……五つくらいしようとすると、謎の力に引っ張られて着席させられた。

 リンネの加護か。覚醒して射程が伸びてから本当に便利になったよね、それ。


「使いこなしちゃって……羨ましい」


「いちゃつくのもほどほどにしてください。主役をほったらかしにして何をしているんですかブラン様は……」


「え、今の私だけが悪いの? エフィは?」


「お嬢様は……公爵令嬢なので許されました」


「こちとら聖女なんですけど?」


「はいはい、聖女なのでいい子にしてくださいね」


 リンネがめちゃくちゃ子ども扱いしてくる件について二人っきりでねっとり話し合いたいところだけど、今日の主役の二人を放置するのもよくないので、オハナシは後の楽しみにしておこうか。


「じゃあ……改めまして二人とも、ようこそシュバルツ邸へ。これからうちのメイドさんとして働いてもらうけど……メイド長のリンネさんが優しく教えてくれるので、よく言うことを聞くように」


「どうも、ご紹介に預かりました。リンネです。ブラン様のセクハラが酷い場合はすぐに相談してくださいね」


「ちょっと。あることないこと吹き込まないでよ」


「あることですが」


「確かに……」


 いやまあ、私がセクハラしまくっているかどうかはさておき、ちょっとだけ納得してしまったのも事実。

 ただ、そんな積極的に悪評を広めようとするのはやめていただきたい。ソラルナ姉妹が私に懐いてくれなかったら減給しちゃうぞ〜。


 あっ、ごめんってエフィ。

 そんなにむくれないで。うー、よしよし、かわいいねぇ。


「こっちがエフィ。エフィネル・オルストロン。二人も知ってると思うけどオルストロン公爵家の令嬢様だよ。とってもいい子だから仲良くしてあげてね」


「エフィネルです。公爵令嬢という身分ですが、ここではただのエフィネルなので、変にかしこまらずに普通に接してくれると助かります。ソラさん、ルナさん、よろしくお願いしますね」


「は、はいっ。よろしくお願いしますっ」


 キリッとした声で自己紹介するエフィなんだけど、私にべったりな状態でしまらないなぁ……。かわいいからいいけど。


 ソラちゃんの反応を見ていると、初めてエフィに出会った時の私みたいだね。いきなりえらい身分の人に普通に接してと言われたらそんな反応になるよねぇ。慌てながらも言いつけは守ろうと必死なところが萌える。


 逆にルナちゃんは特に緊張とかもしていないのかな。お姉ちゃんに比べて落ち着いているというか……口調ものんびりしている感じもするし、いい意味でマイペースなのかもしれない。

 エフィの自己紹介も表情を変えずにこくこく頷いている。


「さて、自己紹介も済みましたし、お二人の歓迎会をしましょうか」


「えっ、私は?」


「ブラン様は……セクハラ聖女です。はい、以上」


「私の紹介それでいいの? よくないって言ってほしいんだけど」


「嘘はいってませんので。それに、お二人はお菓子に飛びつきたくてうずうずしていますよ?」


「あー、もうっ。私のことは二人も知ってると思うから簡単に。ブランノア・シュバルツです。エフィとかリンネみたいにブランって呼んでね。以上」


 まあ、私はちょいちょい二人のところに顔を出していたから、こんなもんでいいだろう。セクハラ聖女という情報が強く伝わってしまっていないか心配だけど……なんとかなるかな。


「では、私は今後の教育の方針なんかを考えたいので、二人とコミュニケーションを取ってきます」


「あ、私も行こうかな」


「ブラン様は二人の教育に悪影響なので来ないでください」


「酷いなぁ。リンネ、私に対してほんと遠慮がなくなったよね」


「立場が変わりましたからね。メイド長になったからには後任の育成はしっかり行いたいですし、主にもしっかり反抗します」


「うーん、長い反抗期になりそうだね」


「一生反抗してやります。なのでブラン様はお嬢様と適当にイチャイチャしててください」


「……そうしようかな」


 一応双子ちゃんとの親睦も深めたかったけど、エフィがそれどころじゃなさそうなので構ってあげないとね。

 ま、二人とは一緒に暮らしていくうちに仲良くなれるでしょ。

 メイドとしての教育はリンネに任せておけば問題なさそうだし、私とエフィは……身分の壁みたいなものを感じさせないように振る舞いたい。


「エフィ、そんなにくっついてどうしたの? なにしてほしいの?」


「お菓子、食べさせてください」


「口移しで?」


「……あの、さすがにリンネやお二人の前では恥ずかしいので……それは二人っきりの時にしてください」


「やだ」


 構ってアピールが激しいエフィに構ってあげる。

 こうしてありのままの私達を見せてあげるのが、二人と仲良くなる秘訣なのかもしれないね。


 新しいお家で、新しい仲間も迎えて始まる新生活。

 とりあえずいいスタートが切れそうだし、これからがとっても楽しみだ。

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劣等聖女の器用大富豪革命 桜ノ宮天音 @skrnmyamn11

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