離れようと思うほど、離れられない。やっかいで、甘美な恋という足枷

ズルい男ほど、どうしてこんなに魅力的なのだろう。
主人公の女性は同じ大学のゼミの一つ年上の先輩に想いを寄せ、心惹かれている。
そんな主人公の気持ちを知りながら男は恋人を作り、その恋人と同棲するために主人公の女性と同じ街に移り住み暮らし始める。

ずっと友達関係だった二人は、過去に恋人になれる機会は沢山あったのだと思う。
けれどこの男は確かな関係になる事をどこか避けているように思います。
友達という関係では収まらない主人公の恋心を知りながら、彼女の心を弄ぶ男のズルさ。
読み進める内に報われない主人公に同情しながらも、このズルさを持つ「沼らせ男」に魅力を感じてしまいました。

恋は逃れられない足枷のように思います。
離れようともがくほど、その足枷の存在がくっきりと体と心に食い込んで離れられない。
そんな「沼らせ男」の魅力をドロドロとした描写ではなく、美しい情景描写と、切なくも心に残る心理描写で描かれた素晴らしい作品でした。

(「沼らせ男/沼らせ女」 恋愛ショートストーリー特集/文=カフカ)

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