第7話 文化祭練習

定期テストも終わり、文化祭に向けて急ピッチでクラスでも練習が始まります。

今日は、3,4時間目に音楽の授業として合唱の練習を行います。


「サビの部分でアクセントをつけながら、リズムよく歌うところが僕は、好きだなあ。」


みなとくんは、クラス全体で聞いたとき、そう思った。


クラス内で、ソプラノ、アルト、テノール、バスに分かれる混声四部合唱をします。各パートでリーダーを中心にパート練習を今、行っています。みなとくんは、少し声が高いので、テノールを担当します。


『みなと、テンポをとるのが難しいな。』

「健太郎、メトロノームで調節したらいいんだよ。」

『それでも、難しいんだけど』

「練習しかないよ!みんなでやっていこうよ。

あと、気持ちを込めることも大事だよ。誰に届けたいかも考えてみるといいよ!」

『じゃあ、みなとは、誰に届けたいと考えるんだ?』

「う~ん、とねぇ」

『みなとも考えてないじゃないか?』

「いや、ちゃんと考えているよ。~ん、両親かな?」

『ためらいがあったけど?』

「両親に届けばいいなと思ってるよ??」

『まあ、攻め立てて聞くことでもないけどさ』


どうやら、個人練習時間は終わりでテノールパートで通して練習するようです。

まだまだ、音程についていくことに少し大変そうなみなとくん。でも、その表情からは、何らかの意思が感じられます。


テノールパートリーダーかつクラスリーダーの南雲洋輔くんが


『みんな、時間はないけど、丁寧に練習しよう!まず、冒頭部から楽譜をみながら、確認していこう』

「はい!」『はい!」〔分かった!〕


みんなが意思をもって、練習していることがわかりますね。

南雲君が責任をもって、みんなに教えていきます。南雲君は、来てくれた人に感動してもらう歌を作ろうと思っているようです。


キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴りました。


「終わったね。健太郎くん」

『そうだな!みなと』

「南雲君の指導は、厳しくて優しかったね」

『彼の熱意がビンビン伝わったな』

「そうだね。あと2週間もないからね」


もう、文化祭まで2週間もないのである。しかし、この中学校では、期末テストが終わってから文化祭まで毎日最低1時間は、音楽があるという、珍しい学校なのである。ちょっと、田舎の学校あるあるかもしれない。


『でも、今日の放課後も少しクラス練習があるし、明日も授業で歌うし、大変だよな』

「まあね。でも、僕は、歌が好きだから、苦にもならないよ!!」


少し、子供っぽさが残るみなとくんではあるが、目には、本当に楽しんでいるということがわかるくらい、つやつやしていた。


そんなこんなで、山西くんとは、分かれたみなとくん。


『あれ、森藤君?』

「どうかしたの、相川さん?」

『いや~、男子パートは、どうかなって、思ってね?』

「南雲君が丁寧に歌のポイントをみんなに教えてくれて、みんなで歌ってみたよ。」

『そう、なんだ。』

「相川さんたちは?」

『私は、ソプラノパートなんだけど、みんなで歌って、私がポイントを解説したって感じかな?私は、パートリーダーなんだから』

「そうなんだ。相川さんは、クラス合唱でも張り切ってやっているんだね。さすが、合唱部だよ!」

『~、そうか、な?』

「そうだよ~」


みなとくんは、満面の笑みで相川さんのことをほめている。


『ん、んん』


相川さんが、照れているのを隠そうと耐えている。一方で、みなとくんは、今も相川さんと向き合っている。みなとくんは、いったい何を考えているのだろうか?





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る