番外編 第二の猫生 街探索④
「……ぐすん…あれ?猫さん……?」
私は牢屋の鉄格子の間を通って中に入ると背中を揺らして、水筒に少年の意識を向かわせる。
「……何だろう…?」
ほらお水だよ。喉がカラカラになっちゃう前に飲んでほしい。
唇が乾いているところを見ると、多分一日一回の食事とお水をあげているだけなんだと思う。生きてさえいればいいって考えなのが腹が立つ。子供は宝なのに!
「お水?お水だ!」
彼は興奮した様子で水筒のお水を飲み干した。
私は私に水筒を結んでいた紐を咥えると少年に近づく。
「結べばいいの?」
私が猫の小さな頭で頷くと、少年は私の体に再び水筒をくくりつけた。
よし!私はすぐに牢屋から出て小屋のそばで必死に体を振るう。
すると予想通り少年の結ぶ力が弱かったので結び目が解け、水筒が落ちた。
ふぅ。水筒が中に転がっていたら牢屋に誰か『人間』が入ったとは思われちゃうかもしれないかね!
猫の私がいる分には何も思われないだろうけど、人間が入り込んだと思われたら場所を移されたりアジトにすぐに移送されちゃうかもしれない。
そしたら公爵様に伝えるのがもっと難しくなっちゃうし、流石にそれは困るからね。
私はすぐに牢屋に戻った。
「……うぅ…寒い……」
今更だけどこの小屋ってボロボロだから風通しがよくてよく冷える。
まずい。私は自分の体毛があるから大丈夫だけど、子供はこのままじゃ凍えて体温が下がっちゃう。
猶予が3日あるって言っても、もしかしたらそれは子供の体力が万端な状況の話ですぐに連れ去られてしまうかもしれない。
せめて私が一緒にいれば少しは暖かくなるかな。
私は少年に近づくと頭を擦りつける。ほれほれ元気だして〜。尻尾ですよ〜。
少しして少年は私を抱えて丸くなると眠りについた。触れている感じは体温は安定してそうだね。彼の体温で段々眠くなってきた。
◇◇◇
はいどうもミケちゃんです。当然のことながら朝イチで警備のごろつきにバレて牢屋を追い出されました。まぁ、さすがにずっと一緒に入れるとは思っていなかったけどね。
それにしても公爵様にどうやってこのことを伝えよう。猫の私だとうまく伝えれる自信がないよ。どうにかして。
うーん。
あ、そうだ。もし商会長が小屋を見張っていた人たちを雇うために金銭を渡していたり、逆に何かあの人たちに何かを売っていたとしたら記録に残っているんじゃないのかな。
そんな風に考えながら問題のコープリット商会に向うと商会から丁度商会長が出ていったところだった。
私結構ついているのかも。出ていったのなら商会長の部屋を調べ放題だしね。ただ、この前いた商会長と会話していた人には気をつけないといけないね。途中で見つかって中を調べられないなんてことになったら困る。
私は慎重にお店の中に入ると昨日訪れた商会長の部屋に潜り込む。
どこにあるんだろう。なかったらそれはそれで困るけど、おそらくあると思うんだよね!
日本にいた時の書籍でこういうお金好きの小物はお金が貯まっていくところを何かに書き記して、それを見て楽しむって載っていた気がするし。
まぁただ大っぴらにわかるところにはない気がする。
この部屋、何か変なんだよなぁ。隣の部屋とのドアの感覚がおかしいっていうか…。なんだろう。
ん?この匂いって…。
私は商会長の近くにあったワインや珍しい像とかが置かれたコレクションの棚に近づく。
やっぱりおかしい!本棚ならわかるけどこんなところからインクの匂いがするなんてどう考えてもおかしい。
あった!私の予感は当たっていたようで棚の下に小さいけどボタンのようなものを見つけた。それを押すと、あら不思議。目の前にあったはずの棚がスライドして奥に隠し部屋があるではありませんか!
どういう仕組みかはわからないけど、それは置いておこう。
中に入ると小さな机があって私は猫の体を活かしてその上に飛び乗った。机上には大量の金貨と薄い本、あと銀の羊が掘られたコインが置かれていた。
私は前脚を器用に使って本のページをめくっていく。読めるのかって?もちろんだよ。私は公爵様のお仕事見ながら文字を覚えた天才猫ちゃんなのだ!
おっ、これがアジトとかにいる人たちとの裏帳簿みたいだね。それに少年がいた場所についても書かれているみたい。あとはこれを公爵様に持っていって見せれば公爵様に伝わって万事解決かな。
========
あとがき
ミケ「そういえば、商会長そんなにお金を溜め込んで何に使って他んだろう」
作者「娼館とか綺麗なお姉さんがいるお店に使い込んでいたみたいだね」
ミケ「はぁ....裏帳簿は隠そうとしても、欲望は隠せないのね.....」
更新が空いてしまってすみません!
いよいよ事件解決ですね!
そして本編をお楽しみにされていた方、お待たせしました。あと1,2話で番外編が完結です!
次回更新は15日の予定です!
本編をお待ちいただいている間、よかったらこちらもご覧ください!
『僕の師匠は隠せない』
世界で唯一の女性の大賢者に師事を仰いだ少年ベリル。 彼は家事が得意で師匠の面倒を見ていた。しかし料理を始めようとしたら今日は何か変で……
びっくりするほど短いほのぼのストーリーです。1分もかからずに簡単に読めるのでよかったらお立ち寄りください。
名前がある猫〜ネームドモンスターになって戦います!野良猫の進化道〜 猫野いちば @kjokaeri
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