番外編 第二の猫生 街探索③

「——畏まりました。そのように取り計います。」


 早速商会に戻った私は商会長の部屋の前に来たところ今の会話を聞いた。早速当たりを引いたみたいだね。


 誰かと会話をしていたみたいだったけど、残念なことに私は天井裏に潜んでいたので声しか聞けなくて相手の姿を見ることができなかった。でもまぁ、ここの商会長が怪しいことをしているのは間違いなさそうだね。


 少しして彼はさっきまで金の亡者みたいな服を着ていたのに、今は端々が切れている貧相な服を着てスラムに向かってい始めた。


 もしかしたらスラムに子供を隠しているのかもしれない。それなら今の格好にも納得がいくしね。


 この世界に来るまではスラムといえばお金に困っている人が盗みを働き必死に生きている。この公爵領ではスラムと言ってもお金に困っているのは同じだけど、しっかり人の管理されていて基本的に皆仕事を持っている人がほとんどだね。


 それでもギリギリ食べていくお金しか稼げないって人が住むための場所になっているみたい。人の管理はされていても建物が取り壊す前とかボロボロで放置されている場所も多いんだよね。


 ただ、以前公爵様に連れていってもらった他の領ではやっぱり日本にいた時のイメージみたいに貧しい人たちがいて人のものを盗んでいる人もいた。公爵様みたいにスラムを整えたくても初期資金が沢山必要みたいで真似したくてもできない領土は多いみたい。

 まぁどこにしても私は匂いがダメなのでスラムにはあまり近づかないけどね。


 おや、商会長がスラムのボロボロ屋に着いたみたい。これはいよいよビンゴかも。


「私だ。開けろ。」


 彼が入ると直ぐに扉は閉められてしまった。ただ私は猫なので耳は聴覚はいいのだ。私はそっと扉の近くで丸くなり聞き耳をたてる。


「それで三日後に俺たちのアジトに運んじまっていいんだよな。」

「あぁ、それで構わない。」


 それだけを確認しに来たのか、再び彼はボロ屋を出る。


 ささ、元凶もいなくなったことだし入ろうかな。だって子供だけだったら衰弱しているかもしれないしね。三日間ずっと無事な補償もないから見にいってあげた方がいい。


 入り口に見張はいるものの、さすがボロ屋で猫が通り抜けれるところはいくらでもある。地下へ繋がる階段を見つけると見張りは入り口だけのようで、誰にも見つからずに地下に入り込むことができた。


「ぐすん……ママぁ……喉が乾いたよぉ…」


 地下は牢屋になっていてそこに1人の少年がいた。年齢は7,8歳くらいかな……。


「なんだ。この猫?!どこから入ってきやがった。」


 ……私が折角たどり着いたというのにあまり時間も経たずに見張りの人たちが牢屋に来てしまった。

 もう!タイミング考えてよね!来たばかりなんだけど!


「猫くらいいいだろ。ほっとけ。」


 もう1人の見張りに宥められたにも関わらず、私の存在が気に入らなかったようで私の体を掴むと外に摘み出される。


 はぁ。せめてあの子を安心させてあげたかったんだけどなぁ。どうやって公爵様に伝えよう。こういう時に猫じゃなかったらって心底思う。


 確かに猫の体は色々なところに入れるしのんびりしていても怒られないけど意思疎通がうまくいかないのが欠点だね。


 まぁでも期限は3日あるみたいだし、ひとまずあの子にお水だけでも運んであげよう!


 ボロ屋から一番近い商店に行くと店員の前で売り物の小さい水筒をペシペシする。すると言わんとしたことがわかったのか水を入れた水筒を私の体に結びつけてくれる。


 たまに撫でてくれるから猫嫌いな人ないってわかっていたけど伝わってよかった。 

 水が入っている水筒は重かったけど、私は落ちないことを確認すると直ぐに少年のところに向かうことにする。


 待ってて少年!私がこのお水を届けてあげるから!


 ◇◇◇



 ミケが去った店内ではミケに水筒を渡した店長が、新人から質問されていた。


「店長。いいんですか?売り物ですよね」

「ん?あぁ、お前は最近ここに来たんだったか。いいんだよ。ミケちゃんはあれくらい多めに見てやれ。そういえば水筒なんで水筒なんだろうな…。」

「ピクニックか誰かにあげたかったんじゃないですか?」


店長が考え込むと新人が茶化すように言った。


「ワハハ、確かに誰かに持っていきたかったのかもな。公爵様とかかもしれねぇ」


 すると近くで見ていた他の店員が「今回のミケちゃんはお水を要求するには必死じゃなかったか?」と問いかけた。


「ん?あぁ言われてみればそうだな。何か急いでいる感じだったな...。そんなに手間じゃないし公爵様の門兵に知らせておくか」


──こうしてミケの意図しないところで少年誘拐の発覚の糸口となる知らせが公爵の元へ届くのだった。




========

あとがき


作者「フハハ、あと少しで....あと少しで.....」

ミケ「なにを作ってるの?」

作者「え?最近ミケが構ってくれなかったからミケのロボットでも作ろうと思って」

ミケ「女性を作ろうとするなんて.....」

作者「侮蔑の眼差し?!いいじゃん!今は猫でしょ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る