夏を食らう

野田 琳仁

夏を食らう

夏を食った。


邪魔だった。だから食らった。

夏なんて、無ければいいのに。

夏さえ無ければ、美しい世界が出来上がる。


春は色鮮やかに世界を色取る。やっとの想いで花たちは躍る。


秋は世界が燃えている。暖かそうな色が強く風吹くように冷えた色を運んでる。


冬は世界が止まって白になる。見渡す限り白になって。いっそ全部全部白に染まればいい。


夏はノイズだ。五月蝿いものばっかで、綺麗なものは全部暑苦しい騒音の奥で、そんなもの欲しくない。


せめて、梅雨は残してやろう。

梅雨は、モノクロームだから。梅雨があれば雨も降る。


色付いて、すこし雨降って、風吹いて、全部無くなって、また色付いて、


そんな世界が欲しい。


だから僕は、夏を食らう。





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夏を食らう 野田 琳仁 @milk4192

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