宴会
「わーーーい!お肉!お肉だ!!」
そう騒ぐ5人の子供たちは魚屋であるジーブスの子供たちである。
「お姉ちゃんが、このお肉貰ってきたの?」
「ううん、お父さんのおかげだよ」
そうソフィアはジーブスの子供に向けて微笑みながら言った。
「ソフィアさんっ……!別に子供たちに嘘をつかなくてもいいのですよ……!」
「なに、言ってるんですか、ジーブスさん。子どもにとって、知らないお姉さんよりもお父さんが取ってきたほうが嬉しいですもの。それに、これはジーブスさんの依頼なので、ジーブスさんのおかげです」
そう言うソフィアを見て、ジーブスは、「この子もまだ十分子どもなのに、なんて素晴らしいのだろう……」そう思った。
「あれぇ、お兄ちゃん、火がつかないよ」
「お、本当だ。どれどれ」
そう子どもの声掛けで、リアムが調理をしている場所に行くと、なにやら壊れていて、火がつかない様子であった。
「ちょっとジニアスくん、3秒だけ目をつぶってられるかな?そうしたら、お兄ちゃんが直してあげる」
「分かった!リアムお兄ちゃん!」
そうジーブスの子供の1人であるジニアスに目をつぶるように言い聞かせたリアム。
ジニアスが目をつぶったのを確認した後、リアムは瞬時に魔法を使い、木に火をつけてたのだ。
「2……1……、うわぁぁすごい!本当に火が付いた!すごいよお兄ちゃん!」
目を輝かせて喜ぶ自分よりも年下の子どもを見て、リアムは純粋に自分の魔術が役に立って嬉しくなった。
「さぁ、火もついたところだし、みんな肉を焼くぞ!!今夜はごちそうだっ!!」
そういうダニエルの声で、一気にジーブス家では、ソフィア、リアム、ダニエル、ジーブス、ジーブスの妻と子供たちでの宴会が始まったのであった――。
広場で踊る人々、合唱団が響かせる音楽
そんな民衆の人々を横目に、ジーブス家の子供たちは肉の取り合いをしていた。
「……ふふっリアム、みんな嬉しそうにお肉をほうばっていて、私も嬉しいわ」
「……そうですね、姫様」
「こんなに楽しく、大人数でご飯を食べるのはあの時ぶりね……、やっぱりこの光景をみると、私のやるべきことが定まる気がするな」
「……どこまででも、私は姫様にお供しますよ」
「あら、リアムったら男前ね」
2年前の出来事を思い出しながら……、ソフィアとリアムは楽しいこのひとときが、永遠に続けばいいのに……。そう思った。
―――夜が更けてきたころ
「今日はありがとな、ファクトタムのソフィアとリアムさんよ」
宴会も終盤に差し掛かってきたころ、そう言いながら、ソフィアとリアムの横にダニエルが座ってきた。
「いいえ、こちらこそ。美味しいお肉をみんなで食べれて幸せですわ」
「はい、僕もです」
ファクトタムとしての初めての依頼はとても、悲しい結末であったけれど……。
今回の依頼はとても楽しく、たくさんのお肉を食べて幸せそうにしている家族を見て、こちらまで幸せになってしまったソフィアとリアム。
そんな、ソフィアとリアムの顔を横目に見ながら、お酒を一口飲んだ後、ダニエルはこう言った……。
「でもよぉ……ほんとは2人とも、いいとこの貴族のお嬢様と坊ちゃんなんだろ?」
そう急に言い出したダニエルにソフィアとリアムは固まってしまった。
「な、な、急になにをいいだすんですか、ダニエルさん!!」
「そ、そうよね、リアム。お酒を飲んで酔っ払ってるわ!!」
そんな明らかに焦る2人の様子を見て、ダニエルは「ガハハッ!!」といつものように豪快に笑った。
「ごめんな、さっきついリアムが魔法を使って火をつけてるところを見ちまったんだよ」
「……っえ!?」
「リーアームー!?」
「そんなに焦んなくたって誰にも言わねえよ。ジーブスの借りもあるしな。それに、前のシドニア男爵の一件で俺たち商人を救ってくれたのは、他でもないソフィアとリアムだ」
「ほ、ほんとうに誰にも言わないのですか……?」
「おう!心配するな、リアム。なんで2人が身分の高い貴族様なのに、こんな平民の俺らを助けてるのかは知らねえが、これからは、俺に出来ることがあれば、何でも2人のことを助けるからな!」
そんなダニエルの熱い言葉に感動したソフィアとリアムは目を大きく見開いて顔を合わせた。
「……こちらこそ、よろしくお願いしますっ!!」
こうして、ソフィアとリアムはダニエルと熱い握手を交わしたのであった。
ダニエルには、魔法を使ったことを見られたことで、身分の高いものとばれてしまったが、王族とその側近とばれていなければ問題ないだろう。
そして、夜は更け、ソフィアとリアムはダニエルとジーブス一家とお別れをし、物陰に隠れてリアムの瞬間移動の魔法により、宮殿に帰ったのであった。
「リアム……、今日はこの宮殿では味わったことのないほど、楽しい1日だったわ」
「そうですね、姫様。民に歓声を受けるご様子は、このロベイン帝国の第一王女そのもののお姿であられました」
「……私に王になる資格など、あるのかしら……」
「私は、姫様のような思いやり溢れる王を嫌う民など、いないと思います。それに、資格無いとお考えになるのなら、ファクトタムで作っていけばいいではありませんか」
「……そうね、リアムありがとう。今日はもう寝るとするわ」
「はい、姫様。お休みなさいませ……」
こうして、ファクトタムを初めて2つ目の依頼を無事、終了させたソフィアとリアムはであった。
ファクトタムのソフィア なまけもの @namakemono_10
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