クイズ大会



 「それでは、第一問!この古語を訳してください――『イン・ウィーノー・ウェーリタース』」


 「おいおい、古語なんて分かんないぜ」「私、古語なんて習っていないわ」


 という不満の言葉が飛び交い、見守る観客もザワザワとしだしたとき……



 「はい!」


 そう手を高く上げるのはソフィアであった。


 「おーっと!最年少参加のジーブス家代表、ソフィアさん!答えをどうぞ!」


 「酒に真理あり」


 ソフィアが答えると、シーンと静まり返る会場。


 そして、視界の町内会長が、持っている紙を見て、目を大きく開きながら……


 「……正解です!!!!ジーブス家に1点!」



 うおぉぉぉぉぉぉぉ!!と盛り上がる観客たち。


 祭りの最後の演目であるため、街の子供たちや酒に酔った大人たちが全員注目している。


 「いいぞ、いいぞ!よく分からんがファクトタムの嬢ちゃん正解しちまったぞ、ジーブス!」


 「ほ、ほんとだね、ダニエル」


 「ひ……ソフィアは生まれつき頭脳明晰なのですよ、ダニエルさん、ジーブスさん。もうお肉は僕たちのもので決まりですね」


 そう観客の中、自分のことのように誇らしげに言うリアム。


 「最高だっ!!」そんなリアムに思いっきり抱き着くダニエル。


 こうして大盛況の中、クイズ大会は進んでいった。







 「それでは、最後の問題です!今のところ、魚屋ジーブス家が全問正解で9点!肉屋が6点!果物屋、仕立屋が4点!雑貨屋が3点という結果です!


 もう勝負は魚屋ジーブス家に決まったと思ったそこの皆さん……!なんと!最終問題を正解した人には、10点を差し上げます!!」



 「なんだよっ!!!そんなのずるじゃないか!俺たちの勝ちが決まったからって!!」


 そう司会者に向かって野次を飛ばす、ダニエル。


 「お、落ち着いてください、ダニエルさん。ソフィアが最終問題も正解すればいいのですから……」


 「そ、そうだけどよぉ……」



 「それでは、最終問題です!このイラル町内会をはじめ、西側の地域などで古くから愛されている豆料理はなんでしょう!全員目の前の紙にお書きください」



 イラル町内会などで古くから嗜まれている豆料理なんて……宮殿育ちのソフィアが知るわけがない……。



 今までとは違い、焦るソフィア……。横をみると、簡単とでも言わんばかりに筆を進める回答者たち……。



 「おいおい、やべえんじゃねえか……?まさか嬢ちゃん、あの誰でも知ってる西側で有名な豆の家庭料理を食ったことがないのか……?」


 ダニエルやリアム、ジーブスが固唾をのんでソフィアを見守る……。



 すると、ソフィアが座っている椅子の下から、「にゃあっ」と聞きなれたいつもの可愛らしい声が聞こえてきた。


 「ね、猫ちゃん!?なんでこんなところに――」


 いつもソフィアに懐いている白い猫が、人知れず足元に現れたと思ったら、何やら全身が草まみれになっていた。


 「どこの草原で遊んできたのよっ、こんなときに…………っあ!!」


 草原……、西側……、豆料理……



 ソフィアの頭には2年前のシルワ村での思い出が、一瞬にして蘇ってきた――。


 孤児院の子供たちと一緒に食べた、あの緑色の豆のスープ……。



 「これだわっ……!!」



 そう言いながら、制限時間ギリギリでソフィアが紙に書いた文字――



 それは、「ヘルネットスープ」 であった。




 「全員の解答は、『ヘルネットスープ』ということですね……


では、正解を発表します。正解は………… 『ヘルネットスープ』でした!!


 ということで、優勝者は、19点の魚屋のジーブス家のソフィアさんです!!おめでとうございます!!!賞品はこのたくさんのお肉たちですっ!!」


 その司会者の発表とともに、広場にソフィアをお祝いするかのように、合奏団の音楽が鳴り始めた。



 「す、すげぇ……ほんとに嬢ちゃん、優勝しちまったぜ……。やったな!ジーブス!!これで、子供たちにたらふく肉を食わせてやれるぞ!!」


 喜ぶダニエルとジーブス、そして壇上の上には、猫を抱えながら、観客の人々からの拍手を一心に受けるソフィア。


 そこに駆け寄るダニエルとジーブス。


 少し遠くから、壇上で観客に手を振り微笑むソフィアの姿を見て、リアムは「さすが、ロベイン帝国の第一王女様であられますね……」そう小さく1人呟いたのであった……。







 「ふーん、なるほどね……。退屈だと思っていたけど、案外僕を楽しませてくれそうじゃん」


 ソフィアが大歓声を浴びる中、観客に紛れ込んだ謎の男が何やら、ソフィアを見ながらそう呟き、去っていった―――。


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