3章 賞品の肉
魚屋のジーブス
「はぁぁ……リアム。やっと終わったよ……」
「だから、やめとこうっていったじゃありませんかぁ……」
シドニア男爵家の一件から数日……。
騎士団も巻き込んだ結果となり、当然提出した証拠の中にあったイーサン大学から手に入れた答案用紙のことで、不法侵入したことがリアムの父であるルイス・スチュワートにばれ、まんまとお説教をくらった2人であった。
「もうっ……!私も悪かったけれど、人助けをしたのに!相変わらずルイスの説教は長ったらしくて嫌いだわ!」
「僕も同感です……姫様」
ルイスの長い説教を受けた2人は疲れ果てていた。
「はぁ、疲れているけれど、ファクトタムに向かいましょうか。リアム」
「えええ!!今から向かうのですか!?今日はお休みしても……」
「だってルイスの説教のせいで、数日も店を開けていないのよ!せっかく初めての依頼をこなしたところなのに!さらに評判を広めなきゃ!」
そう言い、またも宮殿から抜け出したソフィアとリアムは城下町である首都のイーサンに向かうのであった。
といっても、とっくに陛下や側近のルイス・スチュワートにはバレているため、抜け出したという表現は正しくはないのだが……。
「おっ!!ファクトタムの嬢ちゃんたち!!やっと見つけたよぉ!!」
そうファクトタムに向かう途中で声を掛けてきたのは、前回、シドニア男爵の情報提供をしてくれた、髪飾りを売っている旦那、ダニエルであった。
「シドニア男爵が騎士団に捕まった件、嬢ちゃんたちが解決したんだって!?ガードナーのとこの嬢ちゃんから聞いたよ!!」
「あら!もうそんなに私たちの噂が広まっているの?」
「そうってもんよ!まあ、ほとんどは俺が広めたけどな!ガハハッ!!」
そう豪快に笑うダニエルは、いつもの調子であった。
「……それで、僕たちを探していたというのは?どういったご用件で?」
「ああ、そうだった、忘れるところだったよ!嬢ちゃんたち3日も店を開けてないから、どこにいったか探しちまったしな!ちょっと待ってろよ!」
そう言い、何やら向かいの店にズカズカと入っていき、細身の弱々しい男性の肩を組んで、
こちらに戻ってきた。
「こちら、前にも話した魚屋のジーブス。こいつがちょっくら依頼したいことがあんだとよ」
大柄なダニエルに肩を組まれている魚屋のジーブスは、小さな声で、「あっ……ジーブスです……」そう僕たちに名乗った。
「どうだい?嬢ちゃん、ジーブスの話聞いてくれるかい?」
「はい、もちろんです」
そうソフィアは言い、片足を引いて膝を曲げ、ジーブスさんに向かってお辞儀をした。
「ファクトタムへようこそ。お困りのそこのあなた、私たちにお任せください」
「おおお!!なんか嬢ちゃんカッコイイじゃあねえか!ガハハッ!」
そう派手に大笑いするダニエルと困惑している様子のジーブスであった。
ジーブスさんの依頼内容はこうだった。
明日、この商店が立ち並ぶ町内会で、毎年恒例のちょっとした祭りが行われるらしい。そして、最後のビッグイベントとして開催されるのが、クイズ大会だという。
そして、今年は優勝者に与えられる賞品が、肉ということもあって子供が5人もいて、普段満足に肉を食べさせてあげられていないジーブスさんは、なんとしてでも肉を手に入れたいということだった。
「ほら、たしか嬢ちゃん賢かっただろう。俺の髪飾りのことも見抜いてたし。だから、ジーブスの代わりに出て、子供たちにたらふく肉を食わせてやりたいんだ!あ、もちろん嬢ちゃんたちも一緒にな!」
「私の得意分野です。その依頼、承りました」
「おっほらな!ジーブス、俺の言ったとおりだろう?ファクトタムの2人は最高なんだぜ!」
「あ、あ……そのようだね、ダニエル。依頼を引き受けてくれてありがとうございます」
「いえいえ、僕たちは困っている方を助けるのは当たり前のことと存じでおります」
というわけで、明日のクイズ大会にソフィアは参加することになり、なんとしてでも肉を手に入れなければならなくなった。
――――町内会の祭りにて
「ああ、リアム。私緊張してきたわ……」
「大丈夫です、姫様……。姫様は13歳という年齢にも関わらず、大変聡明であられることは、このリアムが補償いたします」
「……そうよね、今までの勉強の日々を活かすときが来たってことね」
「姫様、安心していってらっしゃいませ」
そうリアムに肩を軽く押され、ソフィアは壇上へと上がった。
クイズ大会に参加している人数はソフィアを含め、5名。
魚屋ジーブス家代表のソフィアと、肉屋、雑貨屋、仕立屋、果物屋である。
ソフィア以外は全員大人であるが、町内会の皆が壇上を囲み、注目している中、ソフィアの目は自信に満ち溢れていた。
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