翌日。

「おい。二日後に女が来る。来たら扉を開けて車まで行け。わかったな?」

「分かりました。」


そこからの一日一日は、あっという間に過ぎ去り──




二日後となった。





「あなたが、皐月さつきさんですか?」

女性は、そう聞いてくる

「はい、そうです。私は買われたのですよね。祖父どこに行くかは知りませんが、私を存分に扱ってください。道具でも、武器でも、囮でも、薬物でも。

なんでもしてください。慣れているので」

私は無感情でそう女性に言った

そう、慣れているのだ

体は痣ばかりで痛みもない。


眼の前の女性は努めて真顔にしていたが、私はわかっていた

悲痛な顔をしていたことを。







こんな私がやることは、祖父が昨日言ったことだけ。



昨日祖父は夜中に私を叩き起こして、こう言った

『いいか?

 てめぇはなにも出来ない能無しだ。

 だからせめて囮でもなんでもやって役に立て。薬物でもなんでもな。

 それで死んでも構わねぇ。明日女の言うことは全て聞け。


 分かったな?』


『はい、分かりました。』


私は祖父の言ったことを聞くのだ。

全て祖父の言う通りに事を運ぶように。

祖父の言う通りに。

私という"人物"が人形の様に。

人形劇の様に、私は踊るのだ。





分かっている、祖父はクズだと言う事を


分かっている、祖父は私になんの価値もないと本気で思っている事を。



分かっている、





でも私はそれを聞くことしか出来ない能無し。

分かっている。

すべてわかっている。












もうすべてなにもかもあきらめたかっているのだ。










「大丈夫?」



気が付いたら車の中にいた


横には、私がさっき話した女性がいた

「大丈夫です。気にしないで下さい。いつものことなので。」


なぜ車の中にいるのか。

それはさっき話して、雨だった為車に移動になったのだ。

慣れている。雨なんて。



いつものこと。










いつもの、こと。







……………。







でも、今見ている雨はなんだか────








ザーーーーー





その少女皐月の想いは雨で覆い隠されたのだった。










そう、いつものように。



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魔法少女の失敗作。 春さん @Haruryu

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