魔法少女の失敗作。

春さん

プロローグ

とある少女。



私は、生まれたときから一人ぼっちだ。








「おい!!!この飯クソ不味いぞ!!!」

あぁ。また始まった。

いつものことだ。

「すみません。」

頭を下げる。

「すみませんじゃねぇだろ?!」

「すみません。」

再度頭を下げる。


「……。」

ちっ、という声が私の耳に届く。

「…片付けろ。飯が不味くて食えやしねぇ」

「はい。」

私は無感情のまま、皿を下げた。


この男は私の祖父。

私はいつも暴力を振られている。


…今日は偶々振られなかったが。




私は産まれたと同時に母親が亡くなり、父親は交通事故で既に他界。


なので、祖父に引き取られた。


祖父は外面が良く、表は優しい紳士だが裏はこの様な様子だ。

もう慣れたけれど。


私の身体は全身痣だらけで、その中にはタバコで傷つけられた跡がある。

痣は祖父のストレス解消。タバコは火消し代わりに背中に付けられた。


最初は痛かったが、段々痛覚というものがなくなってきてなにも感じなくなった。良いことなのだろう。


あと……



「なんだ?!なにかあんのか?!」


「いえ。なんでもないです。」



なぜか、祖父は老いていない。

引き取られてから今までずっと見ているが、引き取った当初の顔…そのまんまだ。




不思議だ。







そう思っていたある日、ドアがコンコンと叩かれた。


「…来たな。」

…誰が来たのだろう。覗こうとすると父親に肩を叩かれた。

それも、強引に。


「…てめぇは隠れてろ。あと、耳も塞いでろ。分かったな?」

なにがなんだか分からないがとりあえず頷いて、

「はい。」

と言った。




私はクローゼットに隠れることにした。


男と祖父の声が聞こえる。





「あい──が───魔──少女────なれる────本当──か?」


クローゼットに入っていてよく聞こえないが、私の話らしい。


「──────本当──す────こちら───サイ─────頂けれ──、───多額────金───。───言い値────いいですよ」




…なんとなく分かった。

私をお金にしようとしているのか。




いいけど、別に。





何されようが、なにをしようが。




どうでもいいし。慣れたし。


元々私は無関心だし。


…この身体は良いことなんてないし。

なら"私"と言う”モノ”を使った方がいい。







そう。




それで、いいのだ。

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