エピローグ 旅の終わり




 初めてで、二度目の京都旅行が終わった。


 帰りの新幹線に身を任せ、流れる景色に思いをせると、次から次へと旅の思い出が浮かんでくる。


 初めての場所、二度目の景色。

 初めての再会、二度目の出会い。


 思い出が膨らみ過ぎたところで、浮わついた心を肘掛けに落ち着けようとするが、そこはすでに別の誰かが使っていた。


 二人掛けのシートの廊下側を見やると、そこにはスヤスヤと眠りこけた赤髪あかがみの少女が座っている。両の肘掛けを使っているからか、その寝顔はどこまでも穏やかで、俺は仕方なくちゅうぶらりになった腕を引っ込める。


 きっと旅の始めには隣にいる誰かなんて予想できなかった。


 それが誰でも良かったというわけではなく、一日だけとは言え、共に旅をしたのが彼女だったからこそ、隣にいるのだろう。しかし、少女との旅が大変だったことは言うまでもない。


 彼女が俺に同行すると言い出してからは、情報共有やら新幹線の予約やらで振り回された。その上、帰りの新幹線で早々に爆睡されてしまえば、さすがにため息の一つも漏らしたくなる。


 それでも、悪くはなかった。


 一人は一人で楽しいが、二人は二人で悪くない。

 毎回これをやれと言われれば御免ごめんだが、時々なら考えてみなくもない。


 そう思えるような旅だったことも俺の中で確かだ。


 そんなことを考えていると、どうにも心が浮わついて落ち着かなくなる。


 特にやることもなければ、片側の肘掛けもないため、空いている窓枠を見繕みつくろって頬杖をつく。


 車窓からの景色が目に映ると、反射したガラスにはよくわからない髪色のやつが楽しそうに苦笑いを浮かべていた。



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変わりたい 捻挫 @nenza

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