モンスター&クレーマー
山野エル
モンスター&クレーマー
それは白馬に乗ってやってきた。
異形のものだ。
初めは馬の顔が二つ積み重なっているのかと思った。
よく見ると、白馬に乗っているのは、白馬の首に人間の腰から下がくっついた化け物である。
そいつが腕もないのに両足で馬の背中にしがみついている。
俺の前で足を止めた白馬の上から、その化け物が転がり落ちる。そいつは口にロープを噛み締めていて、その先に木の札が括り付けられていた。
木の札には、怒りをぶつけたような文章が殴り書きされている。
返品!!
理由:ケンタウロスの頭と胴体が逆!!!
俺は溜息をついた。
部下の錬金術師がやらかしやがったのだ。
しかも「現場で完結させろ」とあれだけ口酸っぱく言っておいたのに、あろうことかここの場所を教えやがったのだ。
頭に来てしまった。
木の札を拾い上げて、家の中に戻る。化け物が相変わらずもがいているが知ったことではない。
インクに浸した筆で札の裏側に殴り書きした。
男ひとり乗せてくれればケンタウロスをお返しできたのですが!!!
表に戻って化け物を抱え、馬の上に乗せる。その口にロープを噛ませて、白馬の首を思い切り叩いた。
蹄の音を轟かせて駆けて行く白馬の尻を眺めて、俺は考える。
こうやって気軽に返品できるからよくない。
もうケンタウロスはやめよう。
これからは魚と人だ。
モンスター&クレーマー 山野エル @shunt13
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます