名探偵だった男
第1話
探偵「事件の概要は?」
刑事「被害者は佐藤家の長女、愛美。17歳。高校生。2月14日の午後5時頃に背中を刃物で刺され、死亡しているのが、買い物から帰ってきた母親の愛子によって発見されました。愛美の死亡推定時刻は午後4時頃だそうです」
探偵「被害者の評判はどうだったんだ?」
刑事「すごい可愛くてファンクラブが出来るほど、人気があったみたいですよ。でも、それを鼻にかける様子もなく、亡くなった日であるバレンタインにはクラスの男子全員にチョコをあげていたみたいです」
探偵「家族のアリバイは?」
刑事「父親の春樹は、犯行時刻には会社にいたと複数の同僚が証言しています」
探偵「それなら、犯行は不可能だな」
刑事「母親の愛美も犯行時刻にスーパーで買い物しているところが防犯カメラに映っています」
探偵「……第一発見者である母親にもアリバイがあるのか」
刑事「あと、兄の奏多もICカードの履歴から犯行時刻には、駅にいたことが判明しています」
探偵「誰かにICカードを使わせて偽装しているという可能性は?」
刑事「それはないですね。駅の防犯カメラには彼の姿が映っています」
探偵「じゃあ、外部犯が殺したとしか考えられないな」
刑事「それはありえません。この家の鍵はカードキーでそれにオートロックですよ。どうやって家の中に入ったんですか?」
探偵「へー、今どきは一軒家でもカードキーなんてあるのか。それなら、被害者は殺されたのではなく、自殺したということか」
刑事「でも、どうやって自分で背中に包丁を刺すんです? 背中から心臓を一突きですよ? それに、被害者の愛美は体がとても固くて、ワンピースのファスナーはいつも母親に閉めてもらっていたそうですよ」
探偵「そういえば、けっこう前にコナンで似たようなトリックがあったよな。氷を使って殺人に見せかけて自殺するトリックが」
刑事「僕もそれを思い出したんですが、それなら床が濡れたり、氷が落ちているはずじゃないですか」
探偵「……確かにそうだな。……うん、俺には犯人の検討が付かない。もう帰っていいか?」
刑事「はぁ? いやいや、あなた名探偵なんですよね? 帰らないで早くこの謎を解いて下さいよ」
探偵「俺にはもう無理だ。だから、助手にお願いすることにする」
刑事「助手? そんな人どこにもいないじゃないですか?」
探偵「画面の向こうの君。頼む、君がこの事件の謎を解いてくれ!!」
名探偵だった男 @hanashiro_himeka
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