第12話
「ねえフェスタ、祟り神の恋文の中身ってどんなものなの?」
「マライア、どうして俺が知っていると思うんだ?」
「だってあなたがそれを知らないのならあなたの存在意義がないじゃないですか」
「まるで俺が犬の子だからあっちにいけといったら、俺がこっちに戻ってくるみたいな言い草だな。まあとにかく俺は知らない。知りたくもない。知りたかったら友人に聞くんだな」
「あなたの友人って、敵のことですよね?」
「俺のつっかえ棒でなければな」
「あなたのつっかえ棒ってだけで損した気分になります」
「どうしてだ」
「あなたが友人だと金をもらい損ねるし、あなたが敵だと機嫌をもらい損ねるから」
「俺が嘘をついていたらどうするんだ」
「あなたが嘘をついてもどうせ信じてもらえないから、結局周りが騙されたままで悪口も言えないし称賛は皮肉だし、お礼だけ言うしかないですよ」
「お前のお腹の利子は寝たままなのか」
「私の財布の子はいつでもあなたに食べられてしまいます」
「元気にたくさん育てたらどうだ。タブレットの印刷用紙の現実でな」
「仮想現実の育児所では、常にお嬢さん方がたくさんいらっしゃるので男子禁制なんです。今度男の娘を持ち帰ってきてください」
「俺の似顔絵はどうだ」
「流行に沿った棒人間を描く方がましです」
「混血の金融孤児がたくさん出来上がるぞ。恥ずかしいとは思わないのか」
「純潔の売国奴がたくさんでとても幸せですね。差別はいけないことです」
「家計の計算ばかりでお前もくたくただろう。悪口は大変な出費ではないか」
「汚名を売って、品位を保つ財政に比べれば、法律なんて体面ついでの散財ですよ」
「なあ、マライア。俺には尊い推しがいるんだ。察してくれ」
「あらまあずいぶん強いレベルですね。早く人間性として発散してください」
「かつて太古の昔、竜の始祖には八八八の萌えとなる邪神の刻印があってだな」
「声優たちの全能の声がすべての妄想を現実化する、あの擬人化の設定ですか」
「原典の創作から恋が生まれる、そして宇宙がカオスとなる。それがネットワークの進化なんだ」
「それ購入意欲のないニートははぶられていませんか」
「……」
「……」
「俺としてはね、カオスが恋の僕なのか、恋がカオスの僕なのかに興味あるわけだよ」
「結婚できない人間が何を言ってもひがみなんじゃないんですか?」
「真理は人を傷つける。マライア、覚えておけ」
「審理ですらない物事に、覚えるような心なんて存在するんですか?」
「この世は理不尽な壁に阻まれているんだ。だから俺はこんなんなんだ」
「人の身体的特徴を揶揄するような表現は人として最低です」
「お前の身体のどこら辺が理不尽な壁なんだ」
「そんなことを女の私に説明させるんですか。変態ですね。まさかそこから恋が生まれると言いたいがためにさっきの主張を?」
「理不尽にもほどがある!」
「やれやれ、これだから童貞は。悲しいですね。あ、これを歌にすれば儲かるかもしれませんよ」
「お前さっき自分が言ったこと覚えているか?」
「人の身体的特徴を揶揄するような表現をするのは人として最低です」
「その通りだ」
「すみません。あまりに精神的なことを語り過ぎてしまいました。もうしません」
「お前さあ」
「愛する子羊を犠牲に捧げるのは残酷なことです。ですからあなたも大切になさってください」
「俺の純情が弄ばれた!」
「汚される心配のない立派な心映えです。私はすっかり忘れてしまいますが」
「俺はすっかりやる気だぞ!」
「そして私の胸は宝石の中のゲロのよう。おっと汚い言葉でやる気が削がれてしまいました」
「貴重な祝日を、ふざけたやり取りで消費するな」
「ふざけた毎日を、腐敗と取引で浪費しているのに?」
「今日も明日も風が吹いて雨が降る。そんなもんさ」
「芝居が終わって、迷惑な笑いも終わりです」
彩光倫壊の十二夜 オドラデク @qwert
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