第17話
「裕樹さん、私と付き合ってください」
「……は?」
翌日、珍しく俺の家を訪れた葵ちゃんは、第一声から爆弾発言をした。
インターホンが鳴ってから、玄関を開けた直後のことである。
「ですから、私と付き合ってください」
「え、それって何? 何か用事に付き合えとかそういう……?」
「いえ、私と交際してくださいという意味です」
流石に意味がわからない。
あまりに突拍子もない告白に、俺の思考が止まってしまう。
「……智輝になんか言われた?」
「いえ、そういうわけでは」
俺が辛うじて絞り出した可能性も、即座に否定されてしまう。
とすると残る可能性は……
「結衣か」
「……まあそうですね」
あいつ、葵ちゃんに何吹き込んだんだ……。
「……とりあえず上がろうか。結衣もいるし」
「はい、お邪魔します」
俺は結衣に説明を求めるべく、葵ちゃんを連れてリビングへと向かう。
「あっ、葵ちゃん! こんにちは!」
「こんにちは、結衣さん」
俺たちがリビングに入るなり、結衣が葵ちゃんに抱きついた。
一方の葵ちゃんは冷静に挨拶を返している。
「結衣、それより説明してもらおうか?」
「え、えっと、そのぉ……」
俺が先程の告白について問い詰めると、結衣はモゴモゴと言い淀む。
「じゃんけんに勝った方が裕樹さんに告白していいゲームをしたんですけど、私が勝ったので告白しました」
「普通負けた方が罰ゲームでやるもんじゃないの?」
「いえ、それだと結衣さんが負けて喜ぶことになるので」
「ちょ、ちょっと! 葵ちゃん!」
葵ちゃんの言い分だと、結衣が俺に告白したがっているということになる……よな?
でもどうしてそんな……ああ、俺をからかう役は自分がいいってことか。
「二人とも、あんまり人を勘違いさせるような悪戯はするなよ? もし俺が本気にしたらどうすんだ」
「私はフラれる確信があったので」
俺の問いに即答する葵ちゃん。
確かに俺にその気はないけど、葵ちゃんは可愛いから告白の成功率高いと思うんだよなぁ。
「……告白したら、本気にしてくれる?」
「ッ……例え話だよ」
一方の結衣はモジモジしながら上目遣いでそんな事を言ってきた。
実際に告白されたら俺の答えは「はい」か「YES」しかないと思うが、それを言うのは恥ずかしかったので誤魔化した。
「ほい、自由に食っていいぞ」
「ありがと」
「ありがとうございます」
なんだか気まずい雰囲気になってしまったので、俺はお菓子を入れたカゴをテーブルに持ってくる。
「しっかしまあ、変なゲーム考えたなお前も」
「おっしゃる通りです……」
「私は楽しかったですよ」
「俺は無駄に驚かされただけなんだけどな」
さっきの流れを楽しかったでまとめる葵ちゃん……恐ろしいメンタルの強さである。
俺だったらビビってじゃんけんすらしない自信がある。
そうだ、俺も少しくらい仕返しするか。
でないと俺だけ脅かされて馬鹿みたいだ。
「もっとも、俺は葵ちゃんの言う通り断るつもりだったけどな。理由は他に好きな人がいるから、だ」
俺が言うと、葵ちゃんはにっこりと笑って結衣の方を向く。
二人の視線を受けた結衣はというと、様々な感情の入り交じったよく分からない表情をしていた。
「えっと、それって……」
「これ以上は秘密な」
毎度の事だが俺は本気なので、無条件にダメージを受け続けている。
それならせめて結衣を混乱させてやろうと、俺は半ばムキになって演出を頑張るのだった。
ちなみに葵ちゃんは終始ニコニコだった。
「俺の事好きなのか?」と冗談で言ったら普通に肯定された あぽろ @Mak3804
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