高感度
私は発明家だ。日々、生活に役立つ物をつくろうと努力している。
先日、私はとんでもない発明をした。きっと、大ヒット間違いなしだ。
それを友人の前で披露することにした。
「なんです、それは?イヤホンにアンテナが付いているけど、どんな意味があるんだい。教えてくれよ」
奇妙な形状の発明品に、友人は困惑した。彼は早く説明を求めているようだ。
私はもったいぶりつつ、自信たっぷりに解説を始めた。
「高感度のアンテナを搭載した補聴器だ。アンテナの角度を変えることで、特定の方角からの情報をもらさず受信できるのさ」
ふーん、何がすごいのか。彼は鈍い反応を見せた。私は畳みかける。
「君は株で大儲けをしたいと以前言っていたじゃないか。これを装着し、投資家たちに近づいてみろ。アンテナを彼らに向けることを忘れずに。そうすれば、君は大金持ちさ。保証するよ」
「なるほど、情報を入手して投資に勝ちやすくなるってことか。いいね。ところで、このつまみは何だい?」
「感度を上げ下げできるために使うものだ。余分な情報はシャットアウトした方が良い。頭がパンクしてしまうからね。で、どうかね。使ってみるかい」
「ああ、試してみるよ。儲けたら、あなたにもお礼として一部を支払うよ」
それから数日後。彼は私のもとにやってきた。
どっと疲れている様子に思われた。
「この発明品は感度がめちゃくちゃじゃないか!最低の感度でも、いたるところから悪口や悪意が伝わってくるぞ。それどころか、心の内まで傍受できるような代物なんて売れっこないよ」
最低感度にしても、心まで透視できるようになってしまうようだ。
私は発明品を取り上げ、破壊した。
「世間が悪口や悪意に満ちているなら、知らない方が幸せなこともたくさんあるのだろう。敏感になり過ぎると生きていけなくなるから、こんなものは無い方が良い」
「不思議」に満ちている世界 荒川馳夫 @arakawa_haseo111
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます