私は外国で活躍する記者だ。

今日は、欧州のとある国に取材に来た。

ある町で、大昔の兵士の恰好をする仮装イベントがあると聞いたからだ。

会場へ向かうと、鎧を身にまとう男の集団が行進をしていた。

現代的な街並みを練り歩く彼らを見ていると、古代人がタイムスリップしてきた錯覚をおぼえてしまった。それほどに似合っているのだ。

参加者の一人にインタビューを試みた。

「参加してみて、どうでしたか。感想をお聞かせください」

「いやぁ、とても楽しいですよ。鎧を着て歩くだけで、内から力がわいてくるようでした。ここにいる参加者が皆、同じ気持ちだと思いますね」

ありがとうございます、とお礼を言いつつ、次の参加者へインタビュー。

「友人と一緒に参加しました。実はあまりコスプレに興味がなくて、誘いを断れずに参加したのですが……。鎧を着たら、生まれ変わったみたいで面白かったです」

私は笑顔で手を振りながら、取材を終えて帰ろうとした。すると、別の参加者が声をかけてきた。

「ところであなたは、どこから来たんですか？」

「日本から来ました」

その男は興奮しながら、こんな質問をしてきた。

「日本では異世界へ旅立つのがブームだって聞いたんだ。今度、日本へ旅行に行くんだけれど、どこで異世界を体験できるんだい？パンフレットを見ても、詳しいことが書いていないんだ」

いやあ、それは……。

間違っているけれど、まったくの間違いではない。

どのように答えれば、納得してもらえるだろうか。

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