人物像
テレビを見ていたら、インタビューの映像が流れていた。
どうやらある男が逮捕されたらしく、その知人に人物像を聞いているようだった。
「小さい頃から優しくて、良い子だったわ。困っているひとがいたら、助けてあげようとする子だったの。こんな犯罪を考え付くようには見えなかったから、とても驚いています」
近所に住み、幼少期を知るAさんが落ち着かない様子で答えた。事件を起こしそうな人ではないと本気で信じているようだ。
「高校時代の彼は、物静かでポツーンとしていた。自分で何かを考えて行動しようとするタイプじゃなかった気がする。不思議なやつだったかな」
高校で同級生だったBさんは、淡々と答えた。彼に対して、特別驚いた様子は見られなかった。事務的に答えている印象だった。
「同じ会社で働いてたけど、むしゃくしゃしてると、年下の社員に八つ当たりしてたよ。自分のことは棚に上げて、周りにストレスをまき散らす。あっという間に辞めちまってたけど、あんなやつとは付き合わないようにしてた」
そう語るCさんからは、彼への侮蔑や憎悪の気持ちが感じられた。思い出すのも嫌そうだった。
インタビューを視聴し終えた私は、ふとこんな疑問を抱いた。
「本当に同じ人物なのか?3人ともバラバラなイメージで語っていて、同一人物についてのインタビューだとは思えないぞ」
一個人について説明するのは、ほかのあらゆる事象を説明することよりも難しいことなのかもしれない。
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