スノードロップ 🌼

上月くるを

スノードロップ 🌼





 春のあかしの牡丹雪が降った翌日、虹色の羽をした小鳥が庭に舞い降りました。

 太い幹の先に深緑の葉の円陣を組む金木犀の根元に、白い小花が咲いています。


 

 ――こんにちわ、スノードロップさん。🐦



 虹色の鳥は愛らしく小首をかしげ、フランスの王女さまのようなお辞儀をします。

 涙の滴型の真珠のイヤリングのような小花は、恥ずかしそうに身をくねらせます。




      👑




 毎年、この時期、虹色の鳥は家々の庭で一番に咲くスノードロップを訪問します。

 ただし、そのすがたは人間には見えません、二月の陽光があまりにまぶしいので。


 虹色と純白と……この世でもっとも美しい色彩が、雪解けの庭にならんでいます。

 しばらく小花に寄り添っていた小鳥は「じゃあ、また来春ね」と飛び立ちました。


 金粉をまき散らしたような陽光に吸いこまれてゆく小鳥を見送るスノードロップ。

 けれど、春を告げる小花は太陽に弱いので、釣り鐘型の花をうつむかせたままで。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スノードロップ 🌼 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ