第2話 学校内
「結人は部活とか入んの?」
「入りたいって思うやつがないから多分入らない。秋尾は?」
「入りたくねえ」
高校が始まって長くないのに、皆が「面白い」「明るい」みたいな声を秋尾に言ってるのが何回も聞こえてくるようなやつだ
「ねぇ〜秋尾〜!ホッチキスとか持ってる〜?」
「俺の机の中にあるから勝手取ってって〜!」
名前が わ から始まる人が遠くから秋尾に声をかける。
あ から始まる秋尾が わ の人と仲良くなっているこのヤバさが分かるだろうか。なんで僕は今こんな人と話しているのだろう。
「次の授業英語で自己紹介だってよ。俺出席番号1番だからどうせ最初なんだろうな〜俺英語よりもフランス語とかやってみてーんだけど。」
そんなこと言いながら朝にコンビニで買ってきたであろうパンをむしゃむしゃ食べている。出席番号1番がこういうやつだったら発表とかもどれだけやりやすいことか。
「結人バイトしてたじゃん。俺さ〜最近コンビニのバイト始めたんだけどバイトってマジで暇なんだな。コンビニ、立ってるだけだし初バイトの時張り切って同じシフトの人にいっぱい話しかけたから2回目同じになったらまた話さなくちゃいけないし」
「僕は本屋で働いてるフリして本読んでるからそんな暇だって感じたことない」
「お前それはデカいわ。ラノベとか漫画の試し読みとかも読めんの?」
「うん」
「マジかよ。コンビニバイトにすんじゃなかった....いやコンビニハズレとか思うの失礼か、今日も使ってきたのに」(ムシャムシャ)
秋尾がパンを食い進める。こいつとの会話は結構楽しい。俺に干渉しすぎず独り言になりすぎない話題や言葉遣いをいつもしてくれる。
本屋のことを思い出したせいで昨日のことを思い出す。
秋尾が口にパンを入れたまま俺の顔を見て
「なんかバイト先で結人もムカつくことあった?」
また顔に出てたのだろうか。いやなんでバイト先だって分かった?
秋尾の凄さを感じながら
「帰りに買おうと思ってた最後の1冊を目の前で買われたから」
「ははっwお前本屋のバイトで本好きになり始めてんじゃんw」
僕も秋尾につられて笑う。最後に「本好きすぎるだろ」と言って僕を決めつけずに「バイトで本好きになり始めてる」と言って、僕を「本好き」という少し固いイメージから、「好きになり始めてる」という人間味のある印象を与える言葉にしたのは彼なりの配慮だったのだろうか。僕が学校で勘違いされることに意識して行きにくくならないように無意識で言葉遣いに気をつけてくれたのだろうか。考えすぎかもしれないけどこういう所も人気の秘訣なんだろう。
「英語ほんとに苦手だから学年1に聞いてこよっかな」
「誰のこと。そんな情報あるの?」
「先生が入学テストで100点とった人紹介してたじゃん。個人情報漏らすなよって思うけど...
時刻は13:10。授業の10分前。秋尾はパンを食べながらロングヘアで眼鏡をかけている彼女の方を向く。彼女は何やらカバーをつけた本を楽しそうに読んでいた。そして13:20。秋尾はまだパンを食べていた。柊さんにも聞けず「ヤバい。ほんとうにヤバい」なんか言いながら自席に戻っていくのを見て笑いが堪えられなくなる。どんなに嫌なことがあっても笑わせてくれた秋尾に人柄も相まってその時は嫉妬心なんて微塵もなく心から感謝した。
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